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トレチノインによる分化症候群、口内炎、消化管穿孔

2016年10月掲載

薬剤 トレチノイン腫瘍用薬
副作用 分化症候群、口内炎、消化管穿孔
概要 34歳、男性。汎血球減少症を主訴に来院し、急性前骨髄性白血病(APL)と診断してAll-trans retinoic acid(ATRA)を開始した。第25病日に発熱、呼吸困難、肺浸潤影を認め、分化症候群と診断した。ATRAを中止し、メチルプレドニゾロン投与にて改善した。第29病日にATRAを半量より再開後、口内炎、咽頭痛の増悪を認め、ATRAを中止した。第48病日に突然右下腹部痛を訴え、回盲部の消化管穿孔と診断され、緊急回盲部切除術を実施した。

監修者コメント

APLの治療成績はATRAによる分化誘導療法により画期的に向上した。しかし、分化誘導剤特有の副作用として分化症候群(DS)があり、しばしば重篤化することが問題となっている。本症例では、APLに対してATRAを開始したところ、発熱、呼吸困難、肺浸潤影を認め、DSと診断され、さらに重度の口内炎と回盲部腸管穿孔を発症した。また、ベーチェット病との関連がきわめて高いHLA-B51が陽性であり、DSに伴う高サイトカイン血症がベーチェット病に類似した病態を誘発した可能性が考えられた。本症例のようにATRA投与中に口内炎を発症した症例では、消化管潰瘍・穿孔の可能性を考慮し適切な治療を行うことが必要である。

著者(発表者)
木村賢司ほか
所属施設名
千葉大学医学部附属病院血液内科ほか
表題(演題)
All-trans retinoic acid単独投与後に重度の口内炎と回盲部腸管穿孔を発症したHLA-B51陽性急性前骨髄球性白血病
雑誌名(学会名)
臨床血液 57(6) 765-770 (2016.6)
第169回 日本血液学会例会 (2013.2)

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