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トシリズマブによる劇症型A群連鎖球菌感染症

2016年9月掲載

薬剤 トシリズマブ生物学的製剤
副作用 劇症型A群連鎖球菌感染症
概要 53歳、女性。関節リウマチに対してメトトレキサートとトシリズマブの投与により寛解状態であった。トシリズマブの点滴投与を行った2日後に白色帯下の増加を認め、近医産婦人科を受診し、細菌性膣炎の診断でクロラムフェニコール膣錠を処方された。トシリズマブ投与4日後に悪寒戦慄を伴う発熱を認め、当院に緊急入院となった。血液培養でA群連鎖球菌が検出され、急性呼吸窮迫症候群および敗血症ショックと播種性血管内凝固による多臓器障害を合併した。重篤な経過であったが、十分な抗菌薬投与と全身管理にて軽快退院となった。

監修者コメント

トシリズマブ(アクテムラ®)は、免疫系の活性化に関わるIL-6の受容体に対するモノクローナル抗体製剤であり、主に関節リウマチに対する治療薬として使用されている。本症例では、関節リウマチに対してトシリズマブを投与した後に劇症型A群連鎖球菌感染症を発症した。本剤は発熱やCRP上昇などの炎症反応を誘導するIL-6の作用を阻害するため、感染症の診断が遅れ、本症例のように重篤化する可能性が考えられる。関節リウマチに対する本剤の投与中に、感染症が疑われる所見を認めた際には、早期診断と適切な治療を行うことが重要である。

著者(発表者)
河本恵介ほか
所属施設名
NTT西日本大阪病院アレルギー・リウマチ・膠原病内科
表題(演題)
関節リウマチに対してトシリズマブ投与中に発症した劇症型A群連鎖球菌感染症の1例
雑誌名(学会名)
第212回 日本内科学会近畿地方会 66 (2016)
第212回 日本内科学会近畿地方会 (2016.6.25)

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