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エンパグリフロジンによる糖尿病ケトアシドーシス

2016年7月掲載

薬剤 エンパグリフロジンその他の代謝性医薬品
副作用 糖尿病ケトアシドーシス
概要 35歳、男性。口渇、多尿を主訴に近医を受診し、2型糖尿病と診断され、メトホルミン、エンパグリフロジンが処方された。内服直後から反復する嘔吐が出現し、食事摂取、服薬も困難となったため、当院救急外来を受診された。病歴と検査データから糖尿病ケトアシドーシス(DKA)と診断した。インスリン持続投与を開始したが、ケトーシスは第6病日まで遷延した。第4、5病日のエンパグリフロジンは陽性であり、エンパグリフロジンがケトーシスを遷延させた可能性が示唆された。インスリン強化療法に切り替え、血糖値は安定し、第12病日に退院となった。

監修者コメント

ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬は、近位尿細管のSGLT2を阻害し、尿糖の再吸収を抑制することで尿糖排泄を増加させ、インスリンに依存しない血糖降下作用を持つ新しいタイプの経口血糖降下薬である。本症例では、2型糖尿病に対して、選択的SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジン(ジャディアンス®)の投与によりDKAを発症し、さらにケトーシスからの回復が遅延した。本剤の尿糖排泄促進作用により、脂肪代謝が亢進し、ケトアシドーシスに至る経路が考えられている。SGLT2阻害薬を内服する際には、血糖コントロールが良好であってもDKA発症リスクが高いことを念頭におき、適切な対応を行う必要がある。

著者(発表者)
上西栄太ほか
所属施設名
小牧市民病院糖尿病・内分泌内科
表題(演題)
エンパグリフロジン投与後に発症し,ケトーシスからの回復が遅延したDKAの1例
雑誌名(学会名)
糖尿病 59(4) 196-202 (2016.5)

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