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高分子ヒアルロン酸による関節炎

2016年5月掲載

薬剤 高分子ヒアルロン酸その他の代謝性医薬品
副作用 関節炎
概要 50歳、男性。左変形性膝関節症の診断にて、低分子ヒアルロン酸注射を行うも効果がみられなかったため、高分子ヒアルロン酸の注射を開始した。3回目の注射施行後数時間経過して、左膝痛が出現し歩行困難となったため、翌日、当院救急部を受診した。左膝関節に著明な腫脹と熱感を認め、炎症反応は高値で、関節液は黄色に混濁していた。化膿性関節炎を疑い、鏡視下洗浄、デブリドマンを施行し、術後は持続洗浄と抗生剤の点滴を行った。炎症反応は早期に改善し、持続洗浄は5日、抗生剤は1ヵ月で終了した。術後1年経過した現在、関節炎や骨髄炎は認めていない。

監修者コメント

変形性膝関節症に対する治療として、ヒアルロン酸の関節内注射が広く行われている。また、ヒアルロン酸ナトリウムを架橋して分子量を大きくし、健常の関節液に近づけた高分子ヒアルロン酸の使用も可能になった。高分子ヒアルロン酸の投与により、疼痛と機能の改善が期待されるが、本症例のように、重篤な関節炎を発症することがある。関節炎の原因としては、ヒアルロン酸の架橋部を抗原とした免疫反応が考えられている。高分子ヒアルロン酸を使用する際には、慎重な投与と注意深い経過観察が必要である。

著者(発表者)
岩浅智哉ほか
所属施設名
信州大学医学部運動機能学教室
表題(演題)
高分子ヒアルロン酸投与後に著明な膝関節腫張をきたし緊急手術を要した膝関節症の1例
雑誌名(学会名)
中部日本整形外科災害外科学会雑誌 58(6) 1261-1262 (2015.11)
第124回 中部日本整形外科災害外科学会 (2015.4.10-11)

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