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カペシタビンによるたこつぼ型心筋症

2016年4月掲載

薬剤 カペシタビン腫瘍用薬
副作用 たこつぼ型心筋症
概要 60歳代、女性。切除不能の進行胃癌に対してXP療法(カペシタビン+シスプラチン)が導入された。第2コースの6日目に意識消失と胸部苦悶感を訴え、救急外来を受診。到着時は意識清明ながらショック状態を呈していた。左室造影で心基部の過収縮と心尖部のballooningを認め、たこつぼ型心筋症と診断した。心電図は第2病日から巨大陰性T波が出現し、その後一旦消失、第10病日に再び陰性T波が出現するたこつぼ型心筋症の典型的な経過であった。左室壁運動異常、流出路狭窄は第10病日より急速に改善し、退院時にはほぼ正常化した。なお、フルオロウラシル(5-FU)の代謝酵素であるジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)の活性低下は認めなかった。

監修者コメント

カペシタビン(ゼローダ®)は5-FUのプロドラッグであり、体内で代謝されることによって5-FUに変換されて抗腫瘍効果を発揮する。本症例では、進行胃癌に対して投与されたカペシタビンにより、たこつぼ型心筋症を発症した。たこつぼ型心筋症は精神的・身体的ストレスが誘因となることが多いとされているが、薬剤誘発型も報告されている。カペシタビンの活性本体である5-FUによる心筋症はこれまでにも報告されており、本症例も一過性心筋症の原因としてカペシタビンの関与が強く疑われている。なお、本症例ではDPDの活性低下は認められておらず、5-FUの代謝異常の影響はないと考えられる。

著者(発表者)
坂本考弘ほか
所属施設名
島根大学医学部内科学講座第四
表題(演題)
カペシタビンの関与が疑われたたこつぼ型心筋症の1例
雑誌名(学会名)
第113回 日本内科学会中国地方会 65 (2015)
第113回 日本内科学会中国地方会 (2015.12.12)

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