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低分子デキストラン製剤によるアナフィラキシーショック

2013年2月掲載

薬剤 低分子デキストラン製剤血液・体液用薬
副作用 アナフィラキシーショック
概要 34歳、女性。30歳時に子宮肉腫に対し準広汎子宮全摘術、32歳時に骨盤リンパ節郭清術、33歳時に肝転移を認め、肝部分切除術が施行された。過去に、麻酔歴やサヴィオゾール投与による異常は認めていない。今回、肝転移再発に対して肝部分切除術が施行され、レミフェンタニル、チアミラール、ロクロニウムで麻酔導入、セボフルラン、レミフェンタニル、酸素、空気で維持された。術開始56分後にサヴィオゾールを投与、その5分後に血圧低下、頻脈が生じた。腸間膜牽引症候群、チューブトラブル、気胸などを疑ったが、その後上半身の発赤を確認しサヴィオゾールによるアナフィラキシーと診断した。血圧は49/27mmHg、SpO2は83%まで低下していた。サヴィオゾールの投与を中止(総投与量は200mL)、アドレナリン、ヒドロコルチゾンを投与、アドレナリンの持続投与を開始した。アドレナリン投与開始3分後には血圧91/46mmHg、SpO2 93%、その3分後に血圧137/72mmHg、SpO2 98%に改善し、手術を再開した。手術再開後は呼吸・循環動態の悪化を認めず、手術は予定どおり終了、麻酔からの覚醒も速やかで、術後の経過に異常を認めなかった。術中に血栓予防、微小循環改善を目的に低分子デキストラン製剤を使用することも多いが、麻酔中の循環虚脱や気管支攣縮の原因になりうるので注意が必要である。

監修者コメント

本剤の添付文書使用上の注意、副作用の項に、発現頻度は不明であるが重大な副作用としてショック症状をおこすことがあること、アナフィラキシー等が現れた場合には投与を中止して、適切な処置を行うこととされている。著者の考察によれば、アナフィラキシーの原因として抗デキストラン抗体の存在が知られており、抗デキストラン抗体は消化管内の腸内細菌あるいは肺炎起因菌の細胞壁成分(多糖類)に対して産生されるとされている。

著者(発表者)
河野裕明ほか
所属施設名
独立行政法人国立病院機構善通寺病院麻酔科ほか
表題(演題)
低分子デキストラン製剤によると思われるアナフィラキシーショックの1症例
雑誌名(学会名)
麻酔 61(11) 1265-1268 (2012.11)
第47回 日本麻酔科学会中国・四国支部学術集会 (2010)

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