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チオ硫酸ナトリウムによる代謝性アシドーシス

2016年3月掲載

薬剤 チオ硫酸ナトリウムその他の代謝性医薬品
副作用 代謝性アシドーシス
概要 46歳、男性。先天性シスチン尿症による慢性腎不全のため血液透析をしていた。両下肢に疼痛が出現し、疼痛部位に潰瘍が出現し、安静が保てず透析継続が困難となった。当院救急外来を受診し、下腿潰瘍のため皮膚科に即日入院した。敗血症を合併し、全身管理も要したため内科に転科した。大腿、下腿に2ヵ所以上の皮膚の有痛性難治性潰瘍が認められ、臨床症状、皮膚病理所見よりカルシフィラキシス確実例と診断した。潰瘍病変に対してデブリードマンを施行し、透析後に週3回、チオ硫酸ナトリウム(STS)の静脈注射を実施したところ、嘔気、嘔吐、代謝性アシドーシスが出現した。潰瘍病変が増悪したため、STSの静脈注射に加え局所投与を行ったところ、病変の改善傾向が認められ、嘔気の再燃、代謝性アシドーシスの増悪を抑制できた。疼痛も改善し、フェンタニルの持続静注からロキソプロフェンを中心とした内服薬のみでコントロール可能となった。

監修者コメント

カルシフィラキシスは慢性腎臓病患者に発症する極めて強い疼痛を伴う難治性の皮膚潰瘍および壊死である。カルシフィラキシスの治療は確立されたものはないが、近年、STSの局所投与が皮膚深層の病変にも効果的であり、全身投与に比べ副作用も軽減できる可能性が報告されている。本症例では、難治性カルシフィラキシス患者に対し、STSの静脈投与に加え局所投与を行い、静脈投与量を減少させることで、嘔気・嘔吐、代謝性アシドーシスなどの副作用を軽減することが可能となった。STSの局所投与が難治性カルシフィラキシスの有効な治療法であることを示唆する貴重な報告である。

著者(発表者)
萩原あいかほか
所属施設名
慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科ほか
表題(演題)
カルシフィラキシスに対するチオ硫酸ナトリウム投与により代謝性アシドーシスをきたした1例
雑誌名(学会名)
臨床体液 42 3-8 (2015.8)
第46回 臨床体液研究会 (2014.9.27)

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