ヘパリンナトリウムによる血小板減少症
2016年2月掲載
薬剤 | ヘパリンナトリウム血液・体液用薬 |
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副作用 | 血小板減少症 |
概要 | 67歳、男性。60歳時に糖尿病性腎症と診断され、尿毒症症状と心不全を合併して入院となり、低分子ヘパリンを使用した血液透析を開始した。透析開始から11日後、5回目の血液透析開始から30分後に突然呼吸困難を訴え、低酸素血症を発症した。直ちに血液透析を中止し、酸素投与により症状及び低酸素血症は急速に改善した。血小板数は透析終了時には80×109/Lまで低下した。翌日、血液透析回路に凝血がみられ、ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)が疑われた。その後、抗PF4/ヘパリン抗体の陽性が判明し、臨床経過と検査所見からHITに伴う偽性肺塞栓症(PPE)と診断した。 |
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近年、ヘパリン投与中に血小板数が急激に減少するHITの報告が増加している。HITに伴う動静脈血栓、塞栓症は肺梗塞、心筋梗塞、脳血管障害などを引き起こすが、一方で、肺血管内に明らかな血栓が認められない病態も報告されており、PPEとよばれている。HITに伴うPPEは急性呼吸不全を呈し、血液透析開始から7~10日後に透析開始から30~60分以内に発症するとされている。PPEを早期診断し、速やかにヘパリンを中止すれば、予後は比較的良好である。ヘパリンを使用した血液透析時に呼吸困難などの症状を認めた場合には、本合併症の可能性も考慮し、ヘパリン投与の中止や抗凝固療法の変更など、適切な処置を行う必要がある。
- 著者(発表者)
- 渡會梨紗子ほか
- 所属施設名
- 北里大学医学部腎臓内科
- 表題(演題)
- 血液透析導入時にみられた偽性肺塞栓症を伴うヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の1例
- 雑誌名(学会名)
- 日本腎臓学会誌 57(7) 1248-1252 (2015.10)
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