
ホームIMICライブラリMMWR抄訳2025年(Vol.74)デング熱のアウトブレイクおよび対応 ― プエルトリ・・・
2025/02/20Vol. 74 / No. 5
MMWR74(5):54-60
Dengue Outbreak and Response — Puerto Rico, 2024
デング熱は主にAedes aegypti(ネッタイシマカ)によって感染する蚊媒介性ウイルス感染症である。感染時の症状は無症状から重症化まで多岐にわたるが、徴候および症状は通常、曝露後3~10日に発現し、発熱、筋肉/関節の痛み、眼窩後部痛、発疹、悪心、嘔吐などがある。利用可能な抗ウイルス治療はないが、デング熱が流行するアメリカ地域に居住し、過去にデング熱感染が確認された9~16歳に対しDengvaxiaワクチン(Sanofi-Pasteur社)接種が推奨されている。2024年、北アメリカ、中央アメリカ、南アメリカからPan American Health Organizationへ約1,300万例のデング熱症例が報告された。デング熱ウイルス(DENV)感染はプエルトリコにて頻発しており、季節的ピークは7~11月、3~7年ごとに発生している。2024年のデング熱アウトブレイクは2013年以来、11年ぶりである。プエルトリコでは2024年に計6,291例のデング熱症例が報告された(人口10万人あたり191.4例)。症例数は2024年を通じ流行閾値を超え、特に5月の雨季の始まり以降に高くピークは10月(884例)、週間症例数のピークは第40週(10月)の226例であった。デング熱症例は島全域にて報告され、サンフアン都市圏に集中して症例数が多く、サンフアンが1,200例(17.3%)、カロリーナが254例(5.1%)、リンコンが252例(3.6%)、ラレスが240例(3.5%)、バヤモンが233例(3.4%)であった。罹患率はリンコンにて最も高く(10万人あたり1,659.3例)、次いでマリカオ(同925.3例)、ラレス(同853.9例)、オロコビス(同765.1例)と続いた。全6,291例中、男性は3,364例(53.5%)であり、10~19歳が最も多く(1,845例、29.3%)、次いで20~29歳が多く(1,034例、16.4%)、年齢中央値は24歳であった。生命を脅かす合併症(ショック、出血、臓器不全など)を伴う重症デング熱例は264例であり(4.2%)、その数と割合は10~19歳にて最も多く(75例、28.4%)、次いで20~29歳であった(54例、20.5%)。11例が死亡し(全体例の0.2%)、70歳以上が4例と最も多く(36.4%)、50~59歳、60~69歳がそれぞれ2例であった(各18.2%)。ウイルス学的サーベイランスでは、流行している血清型で優勢なのはDENV血清型3型(DENV-3)であることが確認され、RT-PCR検査が陽性であった全症例(4,942例)のうち2,926例を占めており(59.2%)、次いでDENV血清型1型(DENV-1)が多かった(1,367例、27.7%)。プエルトリコ保健局(PRDH)およびCDCは医療従事者におけるデング熱アウトブレイクに対する意識を高め、デング症例の認識を向上するために3,030回の教育および予防イベントを8地域の約167,000名を対象に実施した。PRDHは既存のアルボウイルス症例調査システムをアップグレードし、症例の追跡および報告データの正確性と管理を改善し、さらに、無料の検査センターを設立し、デング熱と確定診断されたすべての人に対しインタビュー調査を実施することにより詳細な曝露歴、症状進行などの総合的な症例データを収集し、サーベイランス活動を強化した。蚊のサーベイランスおよびコントロール活動としてプエルトリコのVector Control Unit(PRVCU)は2024年1~11月にネッタイシマカ計234,713匹を捕獲し、RT-PCR法にて28,932匹を検査し、そのうち316匹(1.1%)がDENV陽性であった。DENV陽性の蚊の検出数が多かったのは、サンフアン(250/7,985匹、3.1%)、バヤモン(56/18,787匹、0.3%)、カロリーナ(9/1,865匹、0.5%)、リンコン(1/295匹、0.3%)であり、DENV-1が8%、DENV血清型2型が41%、DENV-3が51%であった。PRVCU はPRDH やCDCと協力してDENV感染を減少させるため、広域での幼虫駆除、大量捕獲、成虫駆除、蚊の繁殖場所の特定/除去するための屋外調査などの媒介生物コントロール対策を実施した。2024年9月にPRDHは、殺虫剤のローテーション、効果的な殺虫剤の使用促進のための殺虫剤の定期評価、殺虫剤耐性発現の抑制などの媒介生物コントロールに関する推奨を提供する目的でIntegrated Vector Management advisory committeeを設立した。一般市民への啓発活動として、PRDH、CDC、PRVCU はデング熱予防に関する意識向上を目的とした活動、健康フェア、地域支援イベント、ソーシャルメディアやラジオを通じた宣伝などを実施した。蚊に刺されるリスクを減らすため、プエルトリコの住民や訪問者は防虫剤使用、防護服の着用、扉や窓に網戸のある場所にいることを考慮すべきである。
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