ホームIMICライブラリMMWR抄訳2024年(Vol.73)ウムラ(巡礼)のためのサウジアラビアへの旅行に関連・・・
2024/06/06Vol. 73 / No. 22
MMWR73(22):514-516
Cases of Meningococcal Disease Associated with Travel to Saudi Arabia for Umrah Pilgrimage — United States, United Kingdom, and France, 2024
侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)はNeisseria meningitidis(髄膜炎菌)の感染によって引き起こされ、通常は髄膜炎または敗血症として現れるが、重症化して生命を脅かす可能性もある。6つの血清群(A、B、C、W、X、Y)がほとんどの症例を占めている。髄膜炎菌は、呼吸器飛沫や口腔咽頭分泌物を介してヒトからヒトへと伝染する。無症状の人が髄膜炎菌を有し、他者に菌を伝染させる場合があり、感染しやすい人に疾患をもたらす可能性がある。髄膜炎菌感染症を予防するためのワクチンが利用可能であり、感染者との濃厚接触者に対する抗菌薬の予防的投与は、二次症例を防ぐために不可欠である。ウムラはサウジアラビアのメッカへイスラム教の巡礼であり、年間を通じていつでも行うことができる。ハッジはイスラム教の毎年の巡礼で、今年は6月14日から19日に行われる。ハッジおよびウムラ巡礼に関連した大規模な髄膜炎菌性感染症のアウトブレイクが1987年、1992年、2000~2001年に報告された。今回、2024年にアメリカ、イギリス、フランスでウムラ関連IMD症例が報告された後、調査が開始されたので報告する。2024年4月17日、CDCはアメリカで最近ウムラのためにサウジアラビアに旅行した人で2例のIMD症例について通知を受けた。4月23日には、イギリスとフランスの公衆衛生当局は、追加のウムラ旅行関連の症例が発生したことをCDCに警告した。CDCは4月24日にEpidemic Information Exchange(Epi-X)通知を発行し、アメリカの管轄区にサウジアラビア旅行関連のIMD症例を報告するよう要請した。5月29日時点でアメリカ(5例)、フランス(4例)、イギリス(3例)の3カ国で計12例のサウジアラビア旅行関連症例が確認され、男性7例、女性5例で、0~12歳が2例、25~44歳と45~64歳がそれぞれ4例、65歳以上が2例であった。成人患者10例はサウジアラビアに旅行しており、小児患者2例は患者ではない無症状の成人旅行者の家庭内接触者であった。9例はワクチン未接種で、3例のワクチン接種状況不明であった。旅行した症例は2024年3月から5月にサウジアラビアを訪れ、症状は母国に帰国後の4月と5月に現れた。11例から分離株が全ゲノムシーケンスに利用でき、そのうち10株が髄膜炎菌血清群W(NmW)、1株(アメリカの患者由来)が血清群C(NmC)と同定された。アメリカのNmC分離株、アメリカのNmW分離株1株、フランスのNmW分離株1株に、シプロフロキサシン耐性ゲノムマーカー(gyrA T91I)を認めた。9つのNmW分離株に対し実施した抗菌薬感受性試験では、2株がシプロフロキサシンに耐性を示した。サウジアラビアに入国する1歳以上の巡礼者は、過去3~5年以内に(ワクチンの種類によって異なる)、4価髄膜炎菌ワクチン(MenACWY)を接種している必要がある。サウジアラビア旅行関連症例の濃厚接触者の予防にはリファンピシン、セフトリアキソン、アジスロマイシンを優先的に検討する必要がある。
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