ホームIMICライブラリMMWR抄訳2023年(Vol.72)2人の兄妹における元素状水銀中毒に関連した血小板減・・・
2023/09/22Vol. 72 / No. 38
MMWR72(38):1027-1031
Thrombocytopenia Associated with Elemental Mercury Poisoning in Two Siblings — Connecticut, July 2022
コネチカット州に住む5歳と15歳の2人の兄妹が自宅で見つけた元素状水銀の入った瓶で遊んでから約10日後に点状出血性皮疹、口腔粘膜炎、重度の血小板減少症により入院した。5歳の女児(患者A)はコネチカット州の古い一戸建て住宅に一家で引っ越してから3週間後に、3日間にわたる点状出血性発疹、口腔潰瘍、咽頭痛、悪寒、発熱、鼻出血、倦怠感のためにコネチカット州小児救急科を受診した。臨床検査の結果、重度の血小板減少症[血小板数2,000/μL未満(この年齢の正常値:150,000~700,000/μL)]、貧血、好酸球増多症と、赤血球沈降速度、C反応性タンパク、乳酸脱水素酵素、プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(心機能低下の指標)の値上昇を認め、腹部超音波所見では脾腫が示された。患者Aの診察の時点で、彼女の15歳の異父兄(患者B)も4日間にわたる点状出血性発疹、口腔潰瘍、悪寒、疲労、腹痛により同じ病院で診察を受けていた。患者Bの検査所見では、重度の血小板減少症[血小板数2,000/μL未満(この年齢の正常値:150,000~450,000/μL)]、肝臓酵素値の上昇、赤血球沈降速度とC反応性タンパク値の上昇、低アルブミン血症、ネフローゼ領域のタンパク尿、顕微鏡的血尿が顕著で、患者Aと同様に、脾腫を認めた。兄妹は、血小板輸血、免疫性血小板減少性紫斑病の可能性に対しては免疫グロブリン静注(IVIG)、感染性の原因の可能性に対しては抗生物質による治療を受けた。入院6日後でも患者の感染症評価結果の結論が出なかったため、観察された徴候や症状の原因となる有毒物質への曝露の可能性が検討され、コネチカット州Poison Control Centerに連絡が取られた。医療毒物学者は元素状水銀への曝露の可能性を示唆し、さらなる曝露歴を入手するよう求めた。その後、患者Bは患者Aが入院の約10日前に水銀が入った小さな瓶を見つけたことを明らかにした。水銀は2階の寝室のカーペット敷きの床にこぼれてしまい、兄は約30分間かけて流出物を片付けた。他の家族は流出に気付かず、その部屋で兄は就寝し、妹は遊び場にしていた。水銀の流出から1週間後(入院の数日前)、別の家族が部屋のカーペットに掃除機を使用した。患者AおよびBの全血中水銀濃度は、それぞれ315μg/Lおよび518μg/Lであった(正常値10μg/L未満)。水銀曝露の情報を受けて、兄妹はキレート療法としてジメルカプトコハク酸(オフラベル使用、FDA非承認適応症)により治療された。兄はすぐに回復したが、妹は重度の血小板減少症のため長期の入院が必要となり、最終的にIVIG、ステロイド、トロンボポエチン受容体アゴニストであるロミプロスチム(オフラベル使用、FDA非承認適応症)の反復投与を受けた。水銀汚染の程度の特定や他の家族の評価と治療、および家の除染のために、複数の機関が緊密に連携する必要があった。これらの症例は、元素状水銀毒性の早期検出を促進するための継続的な公衆衛生の支援活動の重要性と、複数の濃厚接触者が同様の兆候や症状を経験した場合には、環境曝露を評価する必要性を示している。
Copyright © 2013 International Medical Information Center. All Rights Reserved.