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MMWR抄訳

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2023/08/25Vol. 72 / No. 34

MMWR72(34):901-906
West Nile Virus and Other Nationally Notifiable Arboviral Diseases — United States, 2021

ウエストナイルウイルスと国に届出義務のある他のアルボウイルス疾患 ― アメリカ、2021年

節足動物媒介ウイルス(アルボウイルス)は、主に感染した蚊やダニに刺されることによってヒトに伝染し、アメリカ本土では、ウエストナイルウイルス(WNV)がアメリカ国内で感染するアルボウイルス疾患の主な原因となっている。他のアルボウイルスは、偶発的なアウトブレイクだけでなく、疾患の散発的な症例の原因ともなる。今回、国に届出義務のあるアルボウイルスについて、アメリカの管轄区域によりCDCに報告された2021年のサーベイランスデータをまとめた。チクングニア熱、デング熱、黄熱、ジカウイルス感染症は2021年では主に旅行を通じて感染したため、これらの症例は今回の報告からは除外した。2021年、アメリカ国内で合計3,035例のアルボウイルス疾患症例がCDCに報告され、このうち2,113例(70%)は神経浸潤性であった。症例の起因ウイルスはWNV(2,911例、96%)、ラクロスウイルス(40例、1%)、ジェームズタウンキャニオンウイルス(32例、1%)、ポワッサンウイルス(24例、1%)、セントルイス脳炎ウイルス(17例、1%)、特定できないカリフォルニア血清型ウイルス(6例、1%未満)、東部ウマ脳炎ウイルス(5例、1%未満)であり、ハワイを除くすべての州とワシントンDCから症例が報告された。WNV感染症例は49州およびワシントンDCの432郡から報告され、年齢中央値は65歳、1,739例(60%)が男性であり、計2,099例(72%)が入院し、227例(8%)が死亡し、死亡例の年齢中央値は75歳であった。WNV感染症例のうち2,008例(69%)が神経浸潤性として分類され、全国での罹患率は人口10万人あたり0.61例であった。アリゾナ州では神経浸潤性症例数が最も多く報告され(1,140例)、WNV神経浸潤性疾患の罹患率が最も高かった(人口 10万人あたり15.7例)。ラクロスウイルス感染、ジェームズタウンキャニオンウイルス感染、ポワッサンウイルス感染、セントルイス脳炎、東部ウマ脳炎に罹患した患者の年齢中央値はそれぞれ6歳、59歳、68歳、73歳、61歳であり、神経浸潤性はそれぞれ39例(98%)、21例(66%)、23例(96%)、11例(65%)、5例(100%)、入院はそれぞれ40例(100%)、24例(75%)、22例(92%)、15例(88%)、5例(100%)、死亡はそれぞれ0例、2例(6%)、3例(13%)、0例、2例(40%)であった。アルボウイルス疾患は重篤な疾患の原因であり続けるため、それらの伝播および蔓延を監視するサーベイランスプログラムを維持することは、予防活動の方向性および促進のために重要である。医療提供者は、無菌性髄膜炎と脳炎の鑑別診断においてアルボウイルス感染症を考慮し、臨床検査用に適切な検体を入手し、症例を公衆衛生当局に迅速に報告する必要がある。予防は、媒介生物を減らすための地域社会と家庭の取り組みと、環境保護庁に登録された防虫剤の使用や防護服の着用など、蚊やダニの刺咬を防ぐ個人の防御策にかかっている。

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