軟ダニ回帰熱 ― アメリカ、2012年～2021年

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ホーム IMICライブラリ MMWR抄訳 2023年（Vol.72)軟ダニ回帰熱 ― アメリカ、2012年～2021年

MMWR抄訳

2023/07/21Vol. 72 / No. 29

MMWR72(29):777－781
Soft Tick Relapsing Fever — United States, 2012–2021

軟ダニ回帰熱(STRF、別名：ダニ媒介性回帰熱)はBorrelia spirochetesに起因するまれな感染症であり、軟体のOrnithodoros(ヒメダニ)属のダニによりヒトに感染する。STRFはアフリカ、アジア、ヨーロッパ、アメリカの特定の地域で流行しており、アメリカではBorrelia hermsiiとBorrelia turicataeの2種がヒトでのSTRFの原因として確認されている。ヒトにおけるSTRFの臨床症状は高熱などであり、頭痛、吐き気、筋肉痛、関節痛を伴い、未治療の場合、7～10日ごと2サイクル以上の発熱エピソードが再発する可能性がある。STRFに対してはドキシサイクリン、βラクタム系薬、アジスロマイシンなどの抗菌薬治療が非常に効果的だが、治療がタイムリーでない場合は死亡を含む重篤な合併症を引き起こすこともある。今回、アメリカにて2012年～2021年に報告されたSTRF症例の人口統計学的および臨床的情報について要約する。この期間、11州にてSTRF症例は251例が確認された。年間症例数の中央値は24例であり[15例(2020年)～41例(2014年)]、期間中に有意な変動は認めなかった。感染者の年齢中央値は39歳(2～92歳)、男性が151例であり(60％)、妊婦はいなかった。人種/民族のデータが明らかな190例のうち93％が非ヒスパニック系白人であった。報告症例数は州によって異なり、カリフォルニア州(33％)、ワシントン州(18％)、コロラド州(14％)、オレゴン州(12％)の4州で全体の75％以上を占め、アリゾナ州(9％)、テキサス州(5％)、アイダホ州(4％)、ユタ州(3％)、モンタナ州(1％)、ネバダ州(1％)、ニューメキシコ州(1％未満)からも症例報告があったが、ワイオミング州からの報告はなかった。B. turicataeに起因する感染が起こりやすいテキサス州中部でのSTRF症例11例のうち4例が洞窟で曝露しており、B.hermsiiに起因する感染が起こりやすい西部の州の症例217例のうち154例(71％)が夏(6～9月)をピークに発症しており、131例は山小屋、15例はキャンプでの曝露が報告された。臨床上の兆候および症状は発熱[97％、発熱エピソード中央値2回(1～9回)]、頭痛(63％)、筋肉痛(59％)、悪寒(54％)、悪心/嘔吐(45％)が多く報告され、入院データが明らかな211例中115例(55％)が入院し、死亡例の報告はなかった。臨床検査データは221例(88％)にて明らかであり、そのうち130例(59％)にてスピロヘータが同定され、91例(41％)にて回帰熱ボレリア抗体が検出された。報告されたSTR症例の地理的分布および季節パターンは1990年代以降、比較的一定しており、STRF流行地域ではヒメダニに咬まれないようげっ歯類の生息する建造物や洞窟などの生息地を避けるべきである。STRF関連の疾病率および死亡率を制御するためにサーベイランス、予防策、診断の向上が必要である。

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