ホームIMICライブラリMMWR抄訳2023年(Vol.72)ポリオ根絶の進捗状況を追跡するサーベイランス ― ・・・
2023/06/09Vol. 72 / No. 23
MMWR72(23):613-620
Surveillance To Track Progress Toward Poliomyelitis Eradication — Worldwide, 2021–2022
1988年のGlobal Polio Eradication Initiative設立以降、野生株ポリオウイルス(WPV)症例数は99.9%超減少し、WPV血清型2型および3型は根絶が宣言されている。WPV 1型(WPV1)はアフガニスタンとパキスタンのみで伝播が継続していたが、2021年~2022年にかけてマラウイ、モザンビークにてパキスタンのものと遺伝子的に関連するWPV1症例が9例報告され、42カ国にて伝播型ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)アウトブレイクが検出された。今回、2021年~2022年の34の優先国(WHOのアフリカ地域24カ国、東地中海地域7カ国、南東アジア地域1カ国、西太平洋地域2カ国)におけるポリオサーベイランス能について述べ[急性弛緩性麻痺(AFP)および環境サーベイランス]、前回の報告を更新する。AFPサーベイランスの2つの指標[非ポリオAFP(NPAFP)率:15歳未満の10万人あたり2例以上、便検体採取率:AFP患者から適切な便検体採取率80パーセント以上を目標]の評価では、アフリカ地域での達成率は2021年の70.8%(17カ国)から2022年には79.2%(19カ国)に増加し、NPAFP率は24カ国すべて、便検体は19カ国が目標値を達成した。2022年はWPV1症例が8例確認され(2021年1例)、cVDPV症例数は2021年の512例[cVDPV1型(cVDPV1)13例、cVDPV2型(cVDPV2)499例]から2022年には653例に増加した(cVDPV1:173例、cVDPV2:480例)。東地中海地域では7カ国すべてが目標値に達し、WPV1、cVDPV1、cVDPV2の症例は2021年では各5例、3例、118例、2022年では各22例、0例、168例報告された。南東アジア地域(ミャンマー)ではNPAFP率が10万人あたり0.2から1.1に改善したが目標値を下回ったままであり、便検体採取率は2021年84.8%、2022年88.0%であり、ポリオ症例は確認されなかった。西太平洋地域(パプアニューギニア、フィリピン)では評価期間中に目標値に達成せず、2021年および2022年のパプアニューギニアのNPAFP率はそれぞれ1.3、1.4、便検体採取率はそれぞれ50%、57.8%、フィリピンではNPAFP率はそれぞれ2.6、2.2と目標値に達したが、便検体採取率はそれぞれ78.4%、79.3%であった。環境サーベイランスは下水検体を採取し、ポリオウイルス検査を行った。採取地点は全体で2021年の553カ所から2022年には725カ所に増加した。アフリカ地域では2021年371カ所、2022年415カ所であり(11.9%増)、目標(ポリオまたは非ポリオエンテロウイルス分離率50%以上)に達した地域は27.8%から40.5%に増加した。東地中海地域では162カ所から294カ所に増加し、パキスタンでは120カ所の増加であり、2021年、2022年ともに85%以上の地点で目標に達した。南東アジア地域と西太平洋地域ではミャンマーが目標値に達し、フィリピンでは2021年が5/17カ所(29.4%)、2022年が4/15カ所(26.7%)にて目標値に達した。世界ポリオ検査室ネットワーク(GPLN)はWHOの6地域、144の検査室にて構成される。2022年、GPLNはAFP患者から採取された193,945の便検体を検査し、アメリカ地域、東地中海地域、ヨーロッパ地域ではポリオウイルス分離の適時性指標(80%以上の検体について受領後14日以内に結果を報告する)を満たしていなかったが、型内分別検査の適時性指標(80%を超す検体について分離菌受領から7日以内、麻痺発症から60日以内に結果を報告する)はすべての地域が満たしていた。2021年~2022年にて、AFP患者36例(アフガニスタン/パキスタン27例、マラウイ/モザンビーク9例)から分離されたWPV1は南アジア(SOAS)遺伝子型のみであった。YB3C遺伝子クラスターに関連したWPV1症例はパキスタン21例、アフガニスタン2例、マラウイ/モザンビーク9例より検出され、YB3Aクラスターはアフガニスタンの3例とパキスタンの環境検体から検出され、YB3BおよびXC2Bが2021年のパキスタンで採取された環境検体から検出された。2021年~2022年、38件のcVDPV新規株群(cVDPV1:8件、cVDPV2:30件)がAFP患者1,454例および750の環境検体から検出された。cVDPV1は2021年の4件(AFP患者16例、環境検体33件)から2022年には7件(AFP患者173例、環境検体99件)に増加し、cVDPV2は2021年の24件(AFP患者617例、環境検体449件)から2022年には17件(AFP患者648、環境検体169件)に減少した。質の高いサーベイランスはポリオウイルス感染を迅速に検出し、集団発生への対応を可能とするため、頻繁なモニタリングによるサーベイランスの改善はポリオ根絶への重要な指針となる。
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