ホームIMICライブラリMMWR抄訳2022年(Vol.71)入院患者における重症サル痘 ― アメリカ、2022・・・
MMWR抄訳
2022/11/04Vol. 71 / No. 44
MMWR71(44):1412-1417
Severe Monkeypox in Hospitalized Patients — United States, August 10–October 10, 2022
入院患者における重症サル痘 ― アメリカ、2022年8月10日~10月10日
2022年10月21日時点で、アメリカでは計27,884例のサル痘患者が報告された。症例の大多数をゲイ、バイセクシュアル、男性同性間性的接触者が占め、HIV感染者、人種/民族マイノリティ集団では偏って影響を受けている。以前のサル痘アウトブレイク時にはHIV感染者、特にAIDSの人において重症症状と予後不良が報告された。今回、2022年8月10日~10月10日、サル痘が重症化して入院した18歳以上の患者57例の人口統計学的特徴、臨床経過および転帰に関するデータをまとめた。患者の54例(95%)が男性であり、年齢中央値は34歳(20~61歳)、39例(68.4%)が非ヒスパニック系黒人/アフリカ系アメリカ人であった。HIV感染者は47例(82%)で、サル痘診断時に4例が抗レトロウイルス療法(ART)を受けていた。全例が重度の皮膚病変を呈し、39例(68%)は重度の粘膜病変を伴い、臓器への浸潤は肺(12例、21%)、眼(12例、21%)、脳または脊髄(4例、7%)に認めた。tecovirimat投与は53例(93%)、tecovirimat静注は37例(65%)、ワクシニア免疫グロブリン静注(VIGIV)は29例(51%)、cidofovir静注は13例(23%)に行われた。集中治療室(ICU)レベルの治療を17例が受け(30%)、12例(21%)が死亡し、5例は死因または死亡に関与する要因がサル痘であり、6例は調査中、1例の死因はまたは死亡に関与する要因サル痘ではなかった。以下に代表的な3症例を示す。患者Aは20代のヒスパニック/ラテン系男性。2022年8月、背部痛とびまん性発疹のため救急科を受診した。病変部のスワブ検体のPCR検査を実施し、2日後にオルソポックスウイルス(OPXV)陽性と判明した。その後1週間で発疹が全身に広がり、労作時呼吸困難、乾咳、持続性の背部痛、左頸部腫脹のため入院となった。入院時に発熱(39.3℃)、顔面、体幹、四肢に中心性潰瘍と痂皮を伴う発疹、口腔内病変、左頸部腫瘤を認めた。また、HIV陽性であり、2020年にHIV陽性となった後、追跡不能となっていた。入院2日目に傾眠となりICUに転室した。翌日、気道を確保し、tecovirimatを静注投与したが、低血圧、痙攣を来し、腎不全となった。その後数日間、昇圧薬、抗てんかん薬、抗生物質、抗真菌薬により治療したが、心肺蘇生を要した。ICU 2日目にVIGIVを投与したが、2日後、脳スキャンにて還流不良を認め、家族が安楽死を選択した。剖検が行われ、病理学的にサル痘と合致する壊死が複数の組織に認められ、OPXV抗原も複数の組織にて検出された。患者Bは30代の黒人男性。AIDSであるがARTは受けていなかった。2022年7月、顔面、頭、背中、性器に発疹が生じ、複数のクリニックにて淋病、クラミジア、梅毒の検査と治療を受けるも性器の病変が進行し、包茎と尿閉のため、発疹出現の4日後に入院した。入院時検査のPCR法にてサル痘ウイルス(MPXV)DNA陽性となり、tecovirimatを14日間経口投し、退院した。10日後、倦怠感、食欲不振、体重減少、手と陰茎に新たな病変が出現し、再入院となった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による菌血症が認められ、頻拍性心室細動のためICUに転室し、tecovirimat静注、VIGIV、抗生物質が投与された。経口tecovirimat、ART下で退院となった。7週後、左手に細菌感染を伴う壊死性病変、左眼窩周囲腫脹、右耳管に排膿と聴力低下を伴う病変を認め、再入院となった。この報告時点ではtecovirimat静注を受けている。患者Cは40代の非ヒスパニック系白人男性。AIDSであるがARTは受けていなかった。2022年7月、顔、胴、手、足、肛門周囲に発疹を認め、PCR検査にてMPXV DNA陽性であった。疼痛管理のため入院し、tecovirimat経口投与とARTを受け、疼痛が緩和し、7日後に退院し、tecovirimatの14日間投与を完了した。退院から約3週間後に手足に疼痛を伴う壊死性病変が出現し、再入院となった。4週間以上のtecovirimatの経口および静注投与、cidofovir、VIGIV、複数の抗生物質を投与するも組織壊死は進行し、右人差し指の軟部組織のデブリードマンと右第4趾切断を施行した。サル痘病変は徐々に退縮し退院したが、病変が消失せず痛みもあるため1週間後に再入院し、VIGIVの2回目投与を受けた。本報告時点では入院したまま、tecovirimat内服とARTが行われている。
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