ホームIMICライブラリMMWR抄訳2022年(Vol.71)急性呼吸器疾患の小児における呼吸器ウイルスサーベイ・・・
2022/10/07Vol. 71 / No. 40
MMWR71(40):1253-1259
Respiratory Virus Surveillance Among Children with Acute Respiratory Illnesses — New Vaccine Surveillance Network, United States, 2016–2021
New Vaccine Surveillance Network(NVSN)は7つの小児医療センター(オハイオ州シンシナティ、テキサス州ヒューストン、ミズーリ州カンザスシティ、テネシー州ナッシュビル、ペンシルベニア州ピッツバーグ、ニューヨーク州ロチェスター、ワシントン州シアトル)にて急性呼吸器疾患(ARI)の小児を登録するアクティブな前向き人口ベースサーベイランスのプラットフォームである。ARIはインフルエンザウイルス、RSウイルス(RSV)、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)、ヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV)、SARS-CoV-2(COVID-19の原因ウイルス)などの呼吸器ウイルスに起因し、乳幼児の疾病につながる。重症化リスク因子を評価し、インフルエンザワクチンおよびCOVID-19ワクチンの有効性を予測するため、NVSNでは病原体別の小児におけるARI罹患率を推定し、臨床データ(基礎疾患、ワクチン接種状況など)を収集している。現在のNVSNサーベイランスは2015年より入院患者で開始され、2016年に救急科(ED)受診患者、2018年に外来受診患者に拡大した。今回は2016年12月~2021年8月にインフルエンザ、RSV、HMPV1~3、アデノウイルス、ヒトライノウイルス/エンテロウイルス(RV/EV)、SARS-CoV-2にて治療を受けた小児の人口統計学的特徴と年ごとの流行について報告する。2016年12月1日~2021年8月31日、計90,085例のARI小児(18歳未満)が確認され、51,441例(57%)が登録された[入院患者22,093例(43%)、ED受診患者23,145例(45%)、外来受診患者6,203例(12%)]。年齢は38,267例(74.4%)が5歳未満、15,986例(31.1%)が1歳未満であり、男児(28,473例、55.4%)が多く、非ヒスパニック系黒人/アフリカ系アメリカ人が32.3%(16,582例)、非ヒスパニック系白人(白人)が31.2%(16,028例)、ヒスパニック系が26.8%であった(13,771例)。入院患者では、8,280名(37.5%)が1歳未満、12,623例(57.1%)が男児、9,042例(40.9%)が白人であった。全体では32,259検体(63%)からウイルス病原体が検出され、4,492検体(9%)からは2種類以上のウイルス病原体が複数検出され、19,182検体(37%)からはウイルス病原体は検出されなかった。検出されたウイルスはRV/EVが14,906検体(30.5%)、RSVが8,461検体(16.9%)と多く、RSVは入院患者(23.7%)、インフルエンザウイルスはED患者(10.8%)、RV/EVは外来患者(39.3%)にてもっとも多かった。COVID-19パンデミック期間である2020年3月~2021年8月31日には、小児1,171名がSARS-CoV-2検査陽性となり、うち411名(35%)が外来患者であった。COVID-19パンデミックが始まった2020年3月以降は、入院患者およびED患者の登録はそれまでに認められていた季節パターンと異なるものとなり、2020年冬期の登録数およびウイルス流行は予想を下回り、2021年夏期にRSV流行および全体の登録数がピークとなった。NVSNデータのさらなる分析とサーベイランス継続は、ARI重症化のリスク因子や健康格差をはっきりとさせ、ワクチンやモノクローナル抗体ベース予防薬の有効性評価、ウイルス病原体から幼児を防護するための政策の指針に極めて重要である。
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