一般財団法人 国際医学情報センター 信頼できる医学・薬学・医療情報を適切に提供することによって健康社会に貢献します。

一般財団法人 国際医学情報センター

IMICライブラリ IMIC Library

ホームIMICライブラリMMWR抄訳2022年(Vol.71)サル痘関連脳脊髄炎の2例 ― コロラド州およびワシ・・・

MMWR抄訳

rss

2022/09/23Vol. 71 / No. 38

MMWR71(38):1212-1215
Two Cases of Monkeypox-Associated Encephalomyelitis — Colorado and the District of Columbia, July–August 2022

サル痘関連脳脊髄炎の2例 ― コロラド州およびワシントンDC、2022年7~8月

サル痘ウイルス(MPXV)はポックスウイルス科に属するオルソポックスウイルスであり、現在のサル痘アウトブレイクでは96カ国に広がり、症例のほとんどがゲイ、バイセクシュアル、男性同性間性的接触者である。アメリカでは本アウトブレイクに関連したサル痘初発例が2022年5月にマサチューセッツ州にて確認され、全50州、ワシントンDC、1管轄地域にて報告されている。MPXV感染での神経侵襲性疾患がこれまでに報告されているが、まれである。今回、アメリカでのアウトブレイク中に生じたサル痘患者における脳脊髄炎の2例を提示する。患者Aはコロラド州在住の30代、ゲイの男性で、2022年7月に発熱、悪寒、倦怠感を来し、3日後、そう痒を伴う水疱膿疱性皮疹が顔面に出現し、その後数日で四肢および陰嚢へ広がった。病変部のスワブ検体はPCR検査でオルソポックスウイルスDNA陽性であり、後にMPXV DNAと確定診断された。発症9日後、進行性の左上下肢脱力としびれ感、尿閉、間欠性持続勃起症を来し入院した。脳MRIにて前頭葉に脱髄を伴う部分強調病変、大脳基底核両側、視床内側部両側、脳梁膨大部、橋に非強調性病変を認めた。脊椎MRIでは胸髄、脊椎円錐灰白質に多発性の縦方向に広がる部分強調病変を認めた。神経症状を発症後すぐにtecovirimatの経口投与を開始し、その後、静注メチルプレドニゾロンのパルス療法、静注免疫グロブリン(IVIG)、静注ペニシリンをレジメンに追加した。数日後にしびれと脱力が部分的に改善したが、2週間後も左足の脱力は持続していた。脊髄の炎症が持続している可能性を考慮し、血漿交換療法(PLEX)を開始したところ、足の脱力感は改善し、皮膚病変も3週間後に消失した。退院し、外来でのリハビリにより1カ月後には歩行補助具を使用して歩行可能となった。患者BはワシントンDC在住の30代、ゲイの男性で、2022年7月に発熱と筋肉痛を来し、その後、顔面、四肢、体幹、肛門周囲にびまん性水疱膿疱性皮疹が出現した。病変部のスワブ検体はPCR検査でオルソポックスウイルスDNA検査陽性であり、後にMPXV DNAと確定診断された。発症5日後に便失禁および尿失禁、両下肢の弛緩性脱力を来し入院した。その後2日間で精神状態変化と鈍麻に進行し、気道確保のため挿管し、集中治療室に移った。脳MRIでは橋、小脳、髄質に非強調病変を認め、脊椎MRIでは頸部中央および胸部上部に多発性部分強調病変を認めた。神経症状発症の2日後に経鼻胃チューブにてtecovirimat投与を開始し(その後すぐに静注に切換え)、静注メチルプレドニゾロンのパルス療法を施行したところ、脱力の改善はすぐにしなかったが、認知機能の軽度改善を認めた。IVIGを開始したが、高熱を来し、2日でIVIGを中止した。PLEXを開始したところ大きな改善を認め、PLEXの5セッション目終了後に抜管となり、下肢脱力も改善し、直腸炎は消失、皮膚病変も5週目までに治癒した。維持免疫抑制療法として静注リツキシマブを投与し、急性期リハビリテーション病院へ転院し、歩行補助具を使用して歩行可能となった。サル痘の神経系合併症が疑われる症例は、臨床症状の範囲の把握を向上させるため、公衆衛生当局に報告すべきである。

References

  • Minhaj FS, Ogale YP, Whitehill F, et al.; Monkeypox Response Team 2022. Monkeypox outbreak—nine states, May 2022. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2022;71:764–9. PMID:35679181 <https://doi.org/10.15585/mmwr.mm7123e1>
  • CDC. 2022 Monkeypox outbreak global map. Atlanta, GA: US Department of Health and Human Services, CDC; 2022. Accessed September 8, 2022. <https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/response/2022/world-map.html>
  • Philpott D, Hughes CM, Alroy KA, et al.; CDC Multinational Monkeypox Response Team. Epidemiologic and clinical characteristics of monkeypox cases—United States, May 17–July 22, 2022. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2022;71:1018–22. PMID:35951487 <https://doi.org/10.15585/mmwr.mm7132e3>
  • Thornhill JP, Barkati S, Walmsley S, et al.; SHARE-net Clinical Group. Monkeypox virus infection in humans across 16 countries—April– June 2022. N Engl J Med 2022;387:679–91. PMID:35866746 <https://doi.org/10.1056/NEJMoa2207323>
  • Pastula DM, Tyler KL. An overview of monkeypox virus and its neuroinvasive potential. Ann Neurol 2022; Epub August 6, 2022. PMID:35932225 <https://doi.org/10.1002/ana.26473>
  • Sejvar JJ, Chowdary Y, Schomogyi M, et al. Human monkeypox infection: a family cluster in the midwestern United States. J Infect Dis 2004;190:1833–40. PMID:15499541 <https://doi.org/10.1086/425039>
  • Otallah S. Acute disseminated encephalomyelitis in children and adults: a focused review emphasizing new developments. Mult Scler 2021;27:1153–60. PMID:32552256 <https://doi.org/10.1177/1352458520929627>
  • Lucas J. An account of uncommon symptoms succeeding the measles; with some additional remarks on the infection of measles and small pox. Lond Med J 1790;11:325–31. PMID:29140010
  • Marsden JP, Hurst EW. Acute perivascular myelinoclasis (“acute disseminated encephalomyelitis”) in smallpox. Brain 1932;55:181–225. <https://doi.org/10.1093/brain/55.2.181>
  • CDC. Monkeypox treatment information for healthcare professionals. Atlanta, GA: US Department of Health and Human Services, CDC; 2022. Accessed September 7, 2022. <https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/clinicians/treatment.html>

ページトップへ

一般財団法人 国際医学情報センター

〒160-0016 
東京都新宿区信濃町35番地 信濃町煉瓦館
TEL:03-5361-7080 (総務課)

WEBからのお問い合わせ

財団や各種サービスについてのお問い合わせ、お見積もりのご依頼、
サービスへのお申し込みはこちらをご覧ください。

お問い合わせ