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MMWR抄訳

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2022/08/26Vol. 71 / No. 34

MMWR71(34):1081-1084
Review of CDC’s Suspension of and Advance Written Approval Process for Dogs Entering the United States from Egypt — May 2019–December 2020

エジプトからアメリカに入国するイヌに対するCDCによる一時停止措置および事前書面承認手続きの見直し ― 2019年5月~2020年12月

イヌが保持する狂犬病ウイルス変異株(DMRVV)はアメリカでは2007年に撲滅されているが、世界中では狂犬病により年間推定59,000人が死亡している。狂犬病ウイルスは通常、感染動物の咬傷や引っ掻き傷から唾液を介して感染する。潜伏期間はイヌとヒトで異なり、イヌの場合、狂犬病ウイルス感染後1~3カ月以内に臨床兆候を呈する。狂犬病は、ヒトでも動物でも臨床症状が現れた後、ほぼ100%死亡する。イヌに対する狂犬病ワクチンの定期予防接種が狂犬病感染予防に100%近い効果があるため、アメリカでは狂犬病流行国から輸入するすべてのイヌに対し、輸入前の狂犬病ワクチン接種を義務付けている。2015年~2019年、DMRVVが流行しているエジプトから狂犬病のイヌ3頭が輸入された。いずれのイヌもエジプトで流行しているDMRVVに感染していることが分子学的に確認され、アメリカ輸入前にエジプトで感染したことが示唆された。2015年、2017年、2019年とエジプトから狂犬病のイヌが輸出されたことから、エジプト国内のイヌ狂犬病管理に問題がある可能性が示唆された。DMRVVがアメリカに輸入された場合、多くの動物とヒトには曝露後予防接種が行われ、州や地方の保険局による監視および評価が行われ、1件あたり20万ドル以上のコストがかかる。2019年5月10日、エジプトからアメリカへのイヌの入国停止措置が発令され、停止期間中にDMRVVをエジプトから輸入する可能性を最大限に抑制するリスク軽減戦略を策定した。エジプトからイヌを輸入したい人はCDCのイヌ輸入許可証を申請し、承認される必要があり、さらに、飼い主または飼い主の代理の輸入業者は、1)CDC Application for Permission to Import a Dog Inadequately Immunized Against Rabiesの記入用紙、2)有効期間内の狂犬病予防接種証明書、3)狂犬病に対する免疫が不十分と思われるイヌの場合は、国際獣疫事務局が認定した検査所での狂犬病血清検査の結果が0.5IU/mL超、4)アメリカ入国時にイヌが生後4カ月以上であり、入国資格があることを示す証明、5)検証可能な識別情報(マイクロチップ)、6)飼い主の雇用、大学、アメリカへの移住または帰国を示す証明、を提出する義務がある。2019年5月~2020年12月、エジプトからアメリカへ296頭のイヌの輸入許可が発行され、輸入後に狂犬病を発症したイヌはいなかった。輸入許可を申請した人の42%はエジプトで休暇を過ごし、アメリカへ帰国した短期旅行者であり、50%はアメリカ国外でワクチン接種をしたイヌを所有していた。許可申請の平均処理日数は、アメリカでワクチン接種をしたイヌが7.9日、国外でワクチン接種をしたイヌが10.4日であった。以上、狂犬病抗体価の血清学的検査を含む幅広く入念なリスク軽減戦略により、エジプトから輸入されたイヌにアメリカでの公衆衛生上のリスクがないこと確実にする能力が改善された。

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