一般財団法人 国際医学情報センター 信頼できる医学・薬学・医療情報を適切に提供することによって健康社会に貢献します。

一般財団法人 国際医学情報センター

IMICライブラリ IMIC Library

ホームIMICライブラリMMWR抄訳2022年(Vol.71)ヒトトキソプラズマ症に関する公衆衛生サーベイランス・・・

MMWR抄訳

rss

2022/07/15Vol. 71 / No. 28

MMWR71(28):889-893
Public Health Surveillance and Reporting for Human Toxoplasmosis — Six States, 2021

ヒトトキソプラズマ症に関する公衆衛生サーベイランスと報告 ― 6州、2021年

トキソプラズマ症は人畜共通感染症の寄生虫であるトキソプラズマ(Toxoplasma gondii)に感染することで引き起こされる。免疫正常者では軽症または無症状の傾向にあるが、免疫不全者では重症化し、致命的な脳症となる可能性がある。また、妊娠中の感染では、胎児の眼感染、頭蓋変形、神経学的奇形、死産、流産などの有害転帰が起こる可能性もある。2011年~2014年、アメリカでは6歳以上の11%がトキソプラズマ症の血清反応陽性と推定されている。アメリカではトキソプラズマ症は国に届出義務のある疾患ではなく、利用できる全国的な公衆衛生サーベイランスデータはないが、2021年4月現在、8州(アーカンソー州、デラウェア州、ハワイ州、ケンタッキー州、ミネソタ州、ネブラスカ州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州)では報告義務のある疾患となっている。デラウェア州とハワイ州を除く6州の公衆衛生当局担当者が調査に参加し、半構造化インタビューにより、州レベルでのトキソプラズマ症サーベイランスについて検討した。トキソプラズマ症が報告義務となった日付、サーベイランスを開始した理由は不明であり、有病率モニタリング、感染源特定の必要性、妊娠への影響、先天性感染、アウトブレイクの特定などが、トキソプラズマ症が報告義務となった理由の可能性として示された。症例定義は、臨床的基準、検査的基準、分類方法(確定例、可能性例、疑い例)などが州によって大幅に異なっていた。症例通知後は、すべての州で感染と病歴に関する調査を試みているが、調査は利用できるリソースに依存するものであり、妊婦のスクリーニングプログラムを実施する州はなかった。ヒト以外のデータをサーベイランスの一環として定期的に収集する州もなく、ネブラスカ州では動物で診断されたトキソプラズマ症に関するデータには飼い主の名前の記載などはなく、ヒトの症例のサーベイランスプログラムとは統合されていなかった。サーベイランスデータはアーカンソー州、ミネソタ州、ウィスコンシン州では州保健局のウェブサイトに公開され、ケンタッキー州ではウェブサイトの年間疾病表にトキソプラズマ症例数が掲載されるが、ネブラスカ州とペンシルベニア州ではデータは外部に開示されていない。トキソプラズマ症に関しては、今後、症例定義を標準化の実施が、症例数を確実にカウントし、疾患の特徴づけるためのより良いサーベイランスデータ活用を可能にする上で役立つであろう。

References

  • Montoya JG, Liesenfeld O. Toxoplasmosis. Lancet 2004;363:1965–76. PMID:15194258 <https://doi.org/10.1016/S0140-6736(04)16412-X>
  • Guerina NG, Hsu HW, Meissner HC, et al.; The New England Regional Toxoplasma Working Group. Neonatal serologic screening and early treatment for congenital Toxoplasma gondii infection. N Engl J Med 1994;330:1858–63. PMID:7818637 <https://doi.org/10.1056/NEJM199406303302604>
  • Jones JL, Kruszon-Moran D, Elder S, et al. Toxoplasma gondii infection in the United States, 2011–2014. Am J Trop Med Hyg 2018;98:551–7. PMID:29260660 <https://doi.org/10.4269/ajtmh.17-0677>
  • Schumacher AC, Elbadawi LI, DeSalvo T, et al. Toxoplasmosis outbreak associated with Toxoplasma gondii–contaminated venison—high attack rate, unusual clinical presentation, and atypical genotype. Clin Infect Dis 2021;72:1557–65. PMID:32412062 <https://doi.org/10.1093/cid/ciaa285>
  • Dubey JP. Outbreaks of clinical toxoplasmosis in humans: five decades of personal experience, perspectives and lessons learned. Parasit Vectors 2021;14:263. PMID:34011387 <https://doi.org/10.1186/s13071-021-04769-4>
  • Bennett C, Straily A, Haselow D, et al. Chagas disease surveillance activities—seven states, 2017. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2018;67:738–41. PMID:29975678 <https://doi.org/10.15585/mmwr.mm6726a2>
  • Thacker SBB, Guthrie S. Surveillance [Chapter 3]. In: Gregg MB, ed. Field epidemiology. 3rd ed. New York, NY: Oxford University Press; 2008:38–64.
  • Dhakal R, Gajurel K, Pomares C, Talucod J, Press CJ, Montoya JG. Significance of a positive Toxoplasma immunoglobulin M test result in the United States. J Clin Microbiol 2015;53:3601–5. PMID:26354818 <https://doi.org/10.1128/JCM.01663-15>
  • Teimouri A, Mohtasebi S, Kazemirad E, Keshavarz H. Role of Toxoplasma gondii IgG avidity testing in discriminating between acute and chronic toxoplasmosis in pregnancy. J Clin Microbiol 2020;58:e00505–20. PMID:32321784 <https://doi.org/10.1128/JCM.00505-20>

ページトップへ

一般財団法人 国際医学情報センター

〒160-0016 
東京都新宿区信濃町35番地 信濃町煉瓦館
TEL:03-5361-7080 (総務課)

WEBからのお問い合わせ

財団や各種サービスについてのお問い合わせ、お見積もりのご依頼、
サービスへのお申し込みはこちらをご覧ください。

お問い合わせ