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MMWR抄訳
2022/05/20Vol. 71 / No. 20
MMWR71(20):686-689
Rabies in a Dog Imported from Azerbaijan — Pennsylvania, 2021
アゼルバイジャンから輸入した犬における狂犬病 ― ペンシルベニア州、2021年
2021年6月10日、アゼルバイジャンのバクーからイリノイ州のシカゴ・オヘア国際空港に犬33匹と猫1匹が貨物として到着し、この時点では入国必要条件を満たしていると思われたため、陸上運輸にて9州(カリフォルニア州、フロリダ州、イリノイ州、ミシガン州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、オハイオ州、ペンシルベニア州、ワシントン州)の飼い主先に移送された。12日、5カ月齢の雑種オス犬(イヌA、体重8.4kg)が下痢、目に見えないものを噛む動作のような神経学的変化(ハエ追い行動など)、流涎過多、興奮を発症し、13日にペンシルベニア州の病院に入院した。入院中にイヌAは発作様行動、鈍麻、突然の心停止を来し、臨床症状が狂犬病ウイルス感染と一致した。心肺蘇生および挿管によりイヌAの症状が安定した後、13日に安楽死が選択され、狂犬病検査用の検体をペンシルベニア州保健局研究所に提出した。16日に直接蛍光抗体検査により狂犬病ウイルス感染が確認され、18日にCDC狂犬病研究所にて抗原変異体タイピング検査により、イヌAのイヌ狂犬病ウイルス変異体感染が確定診断された。狂犬病ウイルスの核タンパクおよび糖タンパクの配列は2002年にアゼルバイジャンの犬から分離された参照用狂犬病ウイルスと高い一致性を示した(それぞれ約99.5%、99%)。CDCのPoxvirus and Rabies BranchとQuarantine and Border Health Services Branchの主導による多州にわたる調査にて、6月2日(イヌA発症の10日前)~13日にアメリカでイヌAに接触した可能性のある37名のうち、リスク評価後に15名(空港職員1名、家庭内接触者7名、ペットショップ店員3名、動物病院スタッフ4名)に対し、狂犬病ウイルスに曝露している可能性を連絡し、狂犬病曝露後予防薬投与が推奨した。13日に採取されたイヌAの生前血清検体に対し、CDC狂犬病研究所にて迅速蛍光焦点抑制試験法により検査された狂犬病ウイルス中和抗体価は0.3IU/mLであり、国際獣疫事務局が規定したカットオフ値(0.5IU/mL)未満であった。この結果は不十分なワクチン接種による抗体反応、または狂犬病ウイルス感染に対する中和抗体の早期産生の影響の可能性を示すものであり、州保健局は他の曝露動物33匹(犬32匹、猫1匹)に対し、狂犬病ワクチンのブースター接種を手配した。ブースター接種前の血清検体が入手できた30匹のうち14匹(47%)は力価が0.5IU/mL未満であり、輸入時の力価が不十分であったことが示唆された。ブースター接種後の血清検体が入手できた32匹のうち7匹はプロスペクティブ血清学的モニタリング(PSM)の要件を満たさず、ワクチン未接種またはワクチン接種不十分であると考えられた。また、検体が入手できなかった1匹はワクチン未接種と判断し、州法を遵守し、これら8匹に対する4~6カ月間の厳重な検疫を実施した。残る25匹はワクチンブースター接種後の血清検体がPSM要件を満たし、以前にワクチン接種済みと考え、45日間の家庭内隔離実施を要求した。隔離中に死亡また発症はなく、すべての動物が2021年12月29日までに必要な検疫を完了した。PSM要件を満たさなかった8匹は同じアゼルバイジャンの動物病院(クリニックA)でワクチン接種されていたことが報告された。クリニックAでは、獣医実習生がワクチン接種を担当し、調査にて接種後のワクチン残量が多かったことが判明し、クリニックAでの狂犬病ワクチンの過少接種が原因であることが示唆された。
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