一般財団法人 国際医学情報センター 信頼できる医学・薬学・医療情報を適切に提供することによって健康社会に貢献します。

一般財団法人 国際医学情報センター

IMICライブラリ IMIC Library

ホームIMICライブラリMMWR抄訳2021年(Vol.70)エンテロウイルスD68に関連する急性呼吸器疾患 ―・・・

MMWR抄訳

rss

2021/11/26Vol. 70 / No. 47

MMWR70(47):1623-1628
Enterovirus D68-Associated Acute Respiratory Illness — New Vaccine Surveillance Network, United States, July–November 2018–2020

エンテロウイルスD68に関連する急性呼吸器疾患 ― 新規ワクチンサーベイランスネットワーク、アメリカ、2018年~2020年7~11月

エンテロウイルスD68(EV-D68)は軽症~重症の急性呼吸器疾患(ARI)や急性弛緩性脊髄炎(AFM)など幅広い疾患に関連する。EV-D68を含むエンテロウイルスは、アメリカでは通常、夏の終りから秋にかけて検出されるが、年により変動する。2014年以前ではEV-D68がCDCに報告されることは稀であったが、2014年に全国的なアウトブレイクが検出されて以降、近年では検出数が増加しており、アメリカでは2014年から2018年にかけては隔年で観察されるパターンとなっている。2017年以降は新規ワクチンサーベイランスネットワークの7つの医療機関にて18歳未満の患者を対象としたEV-D68関連ARIの集団ベースプロスペクティブサーベイランスが行われており、患者から採取された呼吸器検体中のEV-D68がRT-PCR法により検査されている。今回、2018年~2020年の7~11月におけるEV-D68の検出について報告する。同期間の検体数およびEV-D68陽性数は2018年が3,546検体中382検体(10.8%)、2019年が3,769検体中6検体(0.2%)、2020年が2,189検体中30検体(1.4%)であり、ライノウイルス/エンテロウイルス(RV/EV)陽性率は2018年が44.2%、2019年が37.0%、2020年が38.4%であった。EV-D68は7医療機関のうち2018年は全施設、2019年は4施設、2020年は6施設にて検出され、検出数の多い月は2018年が9月、2020年が10月であった。2020年にEV-D68が検出された30検体(30例)のうち16検体(53.3%)はミズーリ州カンザスシティで発生したものであり、配列が確認された23検体はすべてクレードDであった。また、30例の年齢中央値は5.3歳、女児が19例(63.3%)、15例(50%)が入院を要し(うち1例は人工呼吸を要した)、死亡例はなかった。患者の80%超に鼻閉、鼻漏、咳嗽、呼吸困難、または喘鳴があり、14例(46.7%)に喘息または反応性気道疾患が認められた。2018年の同時期が患者の年齢中央値は2.9歳、女児は150例(39.3%)であったのに比し、2020年は年齢、女児の割合が有意に高かった。また、人種/民族別では2018年が非ヒスパニック系黒人(黒人)161例(42.1%)、非ヒスパニック系白人(白人)125例(32.7%)、ヒスパニック系53例(13.9%)、2019年がヒスパニック系4例(66.7%)、黒人1例(16.7%)、2020年が黒人22例(73.3%)、ヒスパニック系3例(10.0%)、白人1例(3.3%)であった。RV/EV症例については人種/民族の分布は3年とも同様であり、黒人の割合が35.0%~38.3%であった。以上、2020年におけるEV-D68の検出数は2014年以降に認められた隔年での流行パターンに基づいた予測よりも少なく、COVID-19感染軽減対策拡大により流行が限られた可能性が考えられる。EV-D68検出の継続的なモニタリングはEV-D68関連のARI、AFMに対する準備として必要である。

References

  • Khetsuriani N, Lamonte-Fowlkes A, Oberst S, Pallansch MA; CDC. Enterovirus surveillance—United States, 1970–2005. MMWR Surveill Summ 2006;55:1–20. PMID:16971890
  • Midgley CM, Watson JT, Nix WA, et al.; EV-D68 Working Group. Severe respiratory illness associated with a nationwide outbreak of enterovirus D68 in the USA (2014): a descriptive epidemiological investigation. Lancet Respir Med 2015;3:879–87. PMID:26482320 <https://doi.org/10.1016/S2213-2600(15)00335-5>
  • Messacar K, Robinson CC, Pretty K, Yuan J, Dominguez SR. Surveillance for enterovirus D68 in Colorado children reveals continued circulation. J Clin Virol 2017;92:39–41. PMID:28521212 <https://doi.org/10.1016/j.jcv.2017.05.009>
  • Abedi GR, Watson JT, Nix WA, Oberste MS, Gerber SI. Enterovirus and parechovirus surveillance—United States, 2014–2016. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2018;67:515–8. PMID:29746455 <https://doi.org/10.15585/mmwr.mm6718a2>
  • Kujawski SA, Midgley CM, Rha B, et al. Enterovirus D68–associated acute respiratory illness—new vaccine surveillance network, United States, July–October, 2017 and 2018. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2019;68:277–80. PMID:30921299 <https://doi.org/10.15585/mmwr.mm6812a1>
  • Olsen SJ, Winn AK, Budd AP, et al. Changes in influenza and other respiratory virus activity during the COVID-19 pandemic—United States, 2020–2021. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2021;70:1013–9. PMID:34292924 <https://doi.org/10.15585/mmwr.mm7029a1>
  • Park SW, Pons-Salort M, Messacar K, et al. Epidemiological dynamics of enterovirus D68 in the United States and implications for acute flaccid myelitis. Sci Transl Med 2021;13:eabd2400. PMID:33692131 <https://doi.org/10.1126/scitranslmed.abd2400>
  • Kidd S, Yee E, English R, et al. National surveillance for acute flaccid myelitis—United States, 2018–2020. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2021;70:1534–8. PMID:34735423 <https://doi.org/10.15585/mmwr.mm7044a2>
  • Iwane MK, Chaves SS, Szilagyi PG, et al. Disparities between black and white children in hospitalizations associated with acute respiratory illness and laboratory-confirmed influenza and respiratory syncytial virus in 3 US counties—2002–2009. Am J Epidemiol 2013;177:656–65. PMID:23436899 <https://doi.org/10.1093/aje/kws299>
  • Biggs HM, McNeal M, Nix WA, et al. Enterovirus D68 infection among children with medically attended acute respiratory illness, Cincinnati, Ohio, July–October 2014. Clin Infect Dis 2017;65:315–23. PMID:28379349 <https://doi.org/10.1093/cid/cix314>

ページトップへ

一般財団法人 国際医学情報センター

〒160-0016 
東京都新宿区信濃町35番地 信濃町煉瓦館
TEL:03-5361-7080 (総務課)

WEBからのお問い合わせ

財団や各種サービスについてのお問い合わせ、お見積もりのご依頼、
サービスへのお申し込みはこちらをご覧ください。

お問い合わせ