一般財団法人 国際医学情報センター 信頼できる医学・薬学・医療情報を適切に提供することによって健康社会に貢献します。

一般財団法人 国際医学情報センター

IMICライブラリ IMIC Library

ホームIMICライブラリMMWR抄訳2021年(Vol.70)メジナ虫症の世界的根絶に向けた進展、2020年1月・・・

MMWR抄訳

rss

2021/11/05Vol. 70 / No. 44

MMWR70(44):1527-1533
Progress Toward Global Eradication of Dracunculiasis, January 2020–June 2021

メジナ虫症の世界的根絶に向けた進展、2020年1月~2021年6月

寄生虫のDracunculus medinensisが原因のメジナ虫症(ギニア虫病)は、従来からD. medinensisの幼虫に感染したカイアシ類(ミジンコ)を含む水を飲むことにより感染していたが、近年では魚や他の水生動物の摂食による感染も増加傾向にある。寄生虫は通常、感染から1年後に宿主の下肢の皮膚から出現し、痛みや障害を引き起こす。メジナ虫症を予防するワクチンや薬、治療薬はなく、根絶は、水の汚染を防ぐための症例の封じ込め、健康教育、水のろ過、テメホス(有機リン系幼虫駆除剤)による安全でない水の処理などの感染を防ぐための介入、安全な飲料水の提供に頼っている。根絶キャンペーンは1980年にCDCにて開始された。1986年には、アフリカおよびアジアの20カ国にて毎年推350万例が発生し、世界保健総会はメジナ虫症の撲滅を呼び掛けた。Carter Centerが主導し、WHO、UNICEF、CDC、その他の提携機関が支援するGuinea Worm Eradication Program(GWEP)は、風土病のある国の保健省に対する支援を開始した。ヒトの症例は2020年にアンゴラ、カメルーン、チャド、エチオピア、マリ、南スーダンで27例、2021年1月~6月に5例(チャド4例、エチオピア1例)が報告され、現在、メジナ虫症の影響を受けているのは6カ国のみであり(アンゴラ、チャド、カメルーン、エチオピア、マリ、南スーダン)、根絶達成は間近のようである。しかし、メジナ虫症の根絶には、市民の暴動、不安定、疫学的および動物学的な懸念という課題が待ち受けている。イヌのギニアワーム感染症は、2012年にチャドで最初に報告され、動物での感染は現在、ヒトの症例を上回っている。感染動物は、2020年にカメルーン、チャド、エチオピア、マリで1,601頭(主に飼い犬)、2021年1月~6月に443頭(チャド441頭、マリ2頭)が報告された。2021年1月~6月では2020年の同時期と比べ、ヒト症例数で74%、動物感染数で60%減少した。現在、すべての国内GWEPは完全に機能しており、COVID-19パンデミックに対応してプログラムスタッフと地域メンバーの安全を確保するための予防策がとられている。1986年以降、WHOは199の国、地域、地区でメジナ虫症のないことを認定しているが、7カ国(メジナ虫症の風土病の5カ国、コンゴ民主共和国、スーダン)はまだ認定されていない。イヌの感染(特にチャド)、マリおよび南スーダンでの市民の暴動と不安定によるアクセスへの妨げは、現在、感染を阻止するための最大の課題である。

References

  • Ruiz-Tiben E, Hopkins DR. Dracunculiasis (Guinea worm disease) eradication. Adv Parasitol 2006;61:275–309. PMID:16735167 <https://doi.org/10.1016/S0065-308X(05)61007-X>
  • Hopkins DR, Ruiz-Tiben E, Weiss AJ, Roy SL, Zingeser J, Guagliardo SAJ. Progress toward global eradication of dracunculiasis—January 2017–June 2018. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2018;67:1265–70. PMID:30439874 <https://doi.org/10.15585/mmwr.mm6745a3>
  • Watts SJ. Dracunculiasis in Africa in 1986: its geographic extent, incidence, and at-risk population. Am J Trop Med Hyg 1987;37:119–25. PMID:2955710 <https://doi.org/10.4269/ajtmh.1987.37.119>
  • World Health Organization. Dracunculiasis eradication: global surveillance summary, 2020. Wkly Epidemiol Rec 2021;96:173–94 <https://www.who.int/publications/i/item/who-wer9621-173-194>
  • Hopkins DR, Ruiz-Tiben E, Eberhard ML, et al. Dracunculiasis eradication: are we there yet? Am J Trop Med Hyg 2018;99:388–95. PMID:29869608 <https://doi.org/10.4269/ajtmh.18-0204>
  • Thiele EA, Eberhard ML, Cotton JA, et al. Population genetic analysis of Chadian Guinea worms reveals that human and non-human hosts share common parasite populations. PLoS Negl Trop Dis 2018;12:e0006747. PMID:30286084 <https://doi.org/10.1371/journal.pntd.0006747>
  • Eberhard ML, Ruiz-Tiben E, Hopkins DR, et al. The peculiar epidemiology of dracunculiasis in Chad. Am J Trop Med Hyg 2014;90:61–70. PMID:24277785 <https://doi.org/10.4269/ajtmh.13-0554>
  • World Health Organization. Meeting of the International Task Force for Disease Eradication, October 2017. Wkly Epidemiol Rec 2018;93:33–8. PMID:29372633
  • Eberhard ML, Yabsley MJ, Zirimwabagabo H, et al. Possible role of fish and frogs as paratenic hosts of Dracunculus medinensis, Chad. Emerg Infect Dis 2016;22:1428–30. PMID:27434418 <https://doi.org/10.3201/eid2208.160043>
  • Cleveland CA, Eberhard ML, Thompson AT, et al. A search for tiny dragons (Dracunculus medinensis third-stage larvae) in aquatic animals in Chad, Africa. Sci Rep 2019;9:375. PMID:30675007 <https://doi.org/10.1038/s41598-018-37567-7>

ページトップへ

一般財団法人 国際医学情報センター

〒160-0016 
東京都新宿区信濃町35番地 信濃町煉瓦館
TEL:03-5361-7080 (総務課)

WEBからのお問い合わせ

財団や各種サービスについてのお問い合わせ、お見積もりのご依頼、
サービスへのお申し込みはこちらをご覧ください。

お問い合わせ