ホームIMICライブラリMMWR抄訳2021年(Vol.70)春休み明けの大学でのアウトブレイクにおける複数のS・・・
2021/09/03Vol. 70 / No. 35
MMWR70(35):1195-1200
Multiple Variants of SARS-CoV-2 in a University Outbreak After Spring Break — Chicago, Illinois, March–May 2021
2021年4月7日、Chicago Department of Public Health(CDPH)は春休み明けのシカゴ都市部の大学で2021年3月29日~4月5日に行われたSARS-CoV-2検査にて37名の陽性者が出たとの報告を受けた。この大学では2021年春の時点で約2,100名の学生が生活しており、COVID-19パンデミックに対応した多くの予防策が行われていた。3月20日~29日の春休み期間は授業を含む大学の活動が停止され、学生にはすべての旅行を控えるよう勧告し、寮を開放していた。大学はこのアウトブレイクを受けてキャンパス内に住む学生に対し1週間寮に待機するよう指導し、授業はすべてリモートとした。2021年3月15日~5月3日、大学では学部生の計158名がCOVID-19と診断され[女性76名(48.1%)、年齢中央値19.4歳]、そのうち114名(72.2%)が大学の寮生であり、他は大学の近くに住んでいた。140名(88.6%)にインタビュー調査をしたところ、127名(90.7%)がCOVID-19の症状を呈し、2名が救急外来を受診したが、入院および死亡例はなかった。COVID-19ワクチンは93名(66.4%)が未接種、43名(30.7%)が部分接種(2回接種シリーズの1回接種または診断前14日以内に2回目を接種)、完全接種は3名(うち2名は症状あり)であった。88名(62.9%)が発症日または検査日の2週間前に接触した他のCOVID-19陽性の学生の名前を覚えており、57名(40.7%)が小集会、食事、勉強中に室内でマスクを外して他の学生と接触する機会があり、パーティーに参加した学生は3名(2.1%)であった。社会的つながり、居住場所、旅行、ウイルス系統を示す症例ネットワーク図を作成し、インタビュー調査データに基づき、25のクラスターを特定した。89名(63.6%)が春休み中にシカゴ外へ旅行し、旅行先は海外が7カ国、国内が23州(カリフォルニア州、コロラド州、フロリダ州、ニューヨーク州など)であった。感染者120名(75.9%)の検体が採取でき、そのうち104検体で全ゲノムシーケンス解析をし得た。シーケンスは9つの異なる系統に分類され、B.1.1.222株が最も多く(66検体、63.5%)、次いでB.1.1.7(α)株(22検体、21.2%)が多かった。B.1.1.222株の配列は5塩基以下の相違であり、単一導入源である可能性が高く、カリフォルニア州の検体と密接に関連し、66名のうち8名(12.1%)にカリフォルニア州への渡航歴があった。以上、大学内では春休み期間に学生が広く移動し、また、新学期の始まりにあたり屋内での集会への参加などによりCOVID-19アウトブレイクが発生する可能性が示された。感染予防対策として、COVID-19ワクチン接種を推奨し、未接種者の行動制限、スクリーニング検査の実施、マスクの着用の推奨などの対策強化の必要性が示唆された。
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