一般財団法人 国際医学情報センター 信頼できる医学・薬学・医療情報を適切に提供することによって健康社会に貢献します。

一般財団法人 国際医学情報センター

IMICライブラリ IMIC Library

ホームIMICライブラリMMWR抄訳2021年(Vol.70)ワクチン接種者における心筋炎報告後のmRNA CO・・・

MMWR抄訳

rss

2021/07/09Vol. 70 / No. 27

MMWR70(27):977-982
Use of mRNA COVID-19 Vaccine After Reports of Myocarditis Among Vaccine Recipients: Update from the Advisory Committee on Immunization Practices — United States, June 2021

ワクチン接種者における心筋炎報告後のmRNA COVID-19ワクチンの使用 ― Advisory Committee on Immunization Practicesの最新情報 ― アメリカ、2021年6月

2020年12月、FDAはPfizer社-BioNTech社製COVID-19(BNT162b2)ワクチンおよびModerna社製COVID-19(mRNA-1273)ワクチンの緊急使用許可(EUA)を発行し、Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP)はそれぞれ16歳以上、18歳以上への接種に関する暫定的な推奨を発表した。2021年5月に、FDAはPfizer社-BioNTech社製ワクチンのEUAを12~15歳に拡大し、ACIPは12歳以上のすべての人を対象にCOVID-19ワクチン接種を推奨している。これら2種類のワクチンはともに、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質をコードする mRNAワクチンであり、接種スケジュールは2回が承認および推奨され、1回目接種からPfizer社-BioNTech社製では21日後、Moderna社製では28日後に2回目接種が行われる。2021年6月11日時点でアメリカでは約2億9,600万回のmRNA COVID-19ワクチン接種が行われ、うち5,200万回が12~29歳への接種であった(初回接種3,000万回、2回目接種2,200万回)。国のワクチン安全性受動監視システムであるVaccine Adverse Event Reporting System(VAERS)には、2020年12月29日~2021年6月11日にmRNA COVID-19ワクチン接種後の心筋炎(心筋炎、心膜炎、心筋心膜炎)が1,226件報告された。心筋炎発現例の年齢中央値は26歳(12~94歳)、ワクチン接種から発現までの期間中央値は3日(0~179日)であった。年齢が明らかな1,194件のうち、687件が30歳未満、507件が30歳以上であり、性別が明らかな1,212件のうち923件が男性、289件が女性であった。また、接種回数が報告されている1,094件のうち76%が2回目の接種後に発現していた。CDCは2021年5月1日~6月11日に報告された30歳未満の心筋炎発現例を優先的に迅速に調査し、このサブセットに含まれる484例の診療記録を医師および心臓専門医を含むプロジェクトにて評価した。その結果、484例中323例がCDCの症例定義に合致し、年齢中央値は19歳(12~29歳)、男性291例、女性32例、ワクチン接種から発現までの期間中央値は2日(0~40日)、92%の症例が接種後7日以内に発現していた。また、309例(96%)が入院し、臨床転帰が明らかな304例のうち95%は調査時点で退院しており、死亡例はなかった。多くの症例は非ステロイド性抗炎症薬の投与などの保存的治療により症状が解消したが、COVID-19ワクチン接種後に発現した心筋炎発現を確認する長期的転帰の追跡調査が進行中である。VAERSへの報告例と2021年6月11日時点のCOVID-19ワクチン接種データから算出された2回目接種100万人あたりの粗発現率(報告例)は、12~29歳男性が40.6例、30歳以上の男性が2.4であり(女性はそれぞれ4.2例および1.0例)、12~17歳の男性(100万回接種あたり62.8例)および18~24歳の男性(同50.5例)にてもっとも高かった。mRNAワクチン接種の利益とリスクのバランスの評価では、12~29歳の男性への2回目接種100万回あたりの心筋炎発現が39~47例に対し、ワクチン接種によりCOVID-19の発症11,000例、入院560例、ICU入院138例、死亡6例を予防でき、30歳以上の男性の場合、ワクチン接種後の心筋炎発現が3~4例に対し、ワクチン接種によりCOVID-19の発症15,300例、入院4,598例、ICU入院1,242例、死亡700例を予防できると算出され、有益性(COVID-19発症、COVID-19による入院、ICU入院、死亡の予防)がリスク(ワクチン接種後の予想される心筋炎)を上回るため、全年齢層でワクチン接種は推奨されている。以上、COVID-19 mRNAワクチンは、とくに12~29歳の男性にて心筋炎リスクが高いことを認識し、心筋炎の症状が発現した場合は医療機関を受診する。CDCおよびFDAはこれらのモニターを継続し、COVID-19パンデミックやリスクや転帰に関する情報があれば情報を追加し、必要に応じて有益性-リスク分析を更新することが重要である。

References

  • Kytö V, Sipilä J, Rautava P. The effects of gender and age on occurrence of clinically suspected myocarditis in adulthood. Heart 2013;99:1681–4. PMID:24064227 <https://doi.org/10.1136/heartjnl-2013-304449>
  • Vasudeva R, Bhatt P, Lilje C, et al. Trends in acute myocarditis related pediatric hospitalizations in the United States, 2007–2016. Am J Cardiol 2021;149:95–102. PMID:33757784 <https://doi.org/10.1016/j.amjcard.2021.03.019>
  • Cooper LT Jr. Myocarditis. N Engl J Med 2009;360:1526–38. PMID:19357408 <https://doi.org/10.1056/NEJMra0800028>
  • Shimabukuro TT, Nguyen M, Martin D, DeStefano F. Safety monitoring in the Vaccine Adverse Event Reporting System (VAERS). Vaccine 2015;33:4398–405. PMID:26209838 <https://doi.org/10.1016/j.vaccine.2015.07.035>
  • Baggs J, Gee J, Lewis E, et al. The Vaccine Safety Datalink: a model for monitoring immunization safety. Pediatrics 2011;127(Suppl 1):S45–53. PMID:21502240 <https://doi.org/10.1542/peds.2010-1722H>
  • Buonsenso D, Munblit D, De Rose C, et al. Preliminary evidence on long COVID in children. Acta Paediatr 2021;110:2208–11. PMID:33835507 <https://doi.org/10.1111/apa.15870>
  • Payne AB, Gilani Z, Godfred-Cato S, et al.; MIS-C Incidence Authorship Group. Incidence of multisystem inflammatory syndrome in children among US persons infected with SARS-CoV-2. JAMA Netw Open 2021;4:e2116420. PMID:34110391 <https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2021.16420>

ページトップへ

一般財団法人 国際医学情報センター

〒160-0016 
東京都新宿区信濃町35番地 信濃町煉瓦館
TEL:03-5361-7080 (総務課)

WEBからのお問い合わせ

財団や各種サービスについてのお問い合わせ、お見積もりのご依頼、
サービスへのお申し込みはこちらをご覧ください。

お問い合わせ