ホームIMICライブラリMMWR抄訳2020年(Vol.69)洗浄および消毒化学物質への曝露とCOVID-19と・・・
2020/04/24Vol. 69 / No. 16
MMWR69(16):496-498
Cleaning and Disinfectant Chemical Exposures and Temporal Associations with COVID-19 — National Poison Data System, United States, January 1, 2020– March 31, 2020
アメリカでは4月19日の時点で50州すべて、ワシントンDCおよび4つの管轄地域より新型コロナウイルス感染症(COVID-19症例)が計720,630例、関連死亡例37,202例がCDCに報告された。原因ウイルスSARS-CoV-2の感染を軽減する予防策として、CDCは高頻度に接触する環境面の洗浄と消毒を推奨している。今回、公衆衛生機関やメディアが推奨するCOVID-19の洗浄と、National Poison Data System(NPDS)に報告された化学物質曝露の件数との関連性に関する可能性の有無について、CDCとAmerican Association of Poison Control Centersのサーベイランスチームは、2020年1~3月と2018年および2019年の同時期とのデータを比較分析した。2020年3月、毒物センターへの洗浄液および消毒液への曝露に関する電話件数が急激に増加した。2020年1~3月には洗浄液に関して28,158件、消毒液は17,392件、計45,550件の電話があり、2018年1~3月の39,122件(洗浄液:25,583、消毒液:13,539件)、2019年1~3月の37,822件(洗浄液:25,021件、消毒液:12,801件)に比べてそれぞれ20.4%、16.4%増加であった。総通話数はすべての年齢層にて増加したが、いずれの年でも5歳以下の小児での曝露がもっとも多く(39.9%~47.3%)、製品別では洗浄液では漂白剤が (1,949件、62.1%)、消毒液では非アルコール性消毒液(1,684件、36.7%)および手指消毒液(1,684件、36.7%)がもっとも増加していた。2019年と比較した曝露経路は吸入がもっとも増加した(洗浄液:35.3%、4,713件から6,379件、消毒液:108.8%、569件から1,188件)。NPDSデータにはCOVID-19による洗浄と化学物質曝露との明確な関連性を示す情報はないが、これの製品の使用増加と明確な時間的関連性が示唆される。化学物質の不適切な使用と不必要な曝露を避けるため、これらを使用する場合は常にラベルを読み、その指示に従って、希釈には常温の水を使用し、化学製品の混合を避け、目と皮膚を保護するものを装着し、十分な換気を行い、子供の手の届かないところで保管することが重要である。以下に毒物センターへ電話のあった化学物質曝露の実例2例を呈示する。症例1は成人女性。購入したすべての食料品を摂取前に洗浄することをニュースで聞き、台所の流し台に10%漂白液、酢、お湯を混合して入れ、食料品を浸した。他の食料品を洗浄する間に台所から発生する塩素の不快な匂いに気づき、呼吸困難、咳、喘鳴を来し、911に連絡し、救急車で救急外来(ED)に搬送された。軽度の低酸素血症と呼気終末の喘鳴を来したが、酸素および気管支拡張薬投与にて改善し、数時間の観察後に帰宅した。症例2は就学前の子供。自宅で無反応となり、救急車でEDに搬送された。蓋の開いたエタノールベースの手指消毒液ボトル(64オンス)がテーブルの上で発見され、家族によると、未知量を摂取した後にめまいを来し、転倒し頭部を打っていた。搬送中に嘔吐し、血中アルコール濃度は273mg/dLに上昇していた(ほとんどの州法で運転に影響なしとされる血中アルコール上限値は80mg/dL)。小児集中治療室に一晩入院し症状は改善、48時間後に退院した。
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