ホームIMICライブラリMMWR抄訳2020年(Vol.69)肺ペストの輸入感染を阻止するための介入 ― ウガン・・・
MMWR抄訳
2020/03/06Vol. 69 / No. 9
MMWR69(9):241-244
Intervention To Stop Transmission of Imported Pneumonic Plague — Uganda, 2019
肺ペストの輸入感染を阻止するための介入 ― ウガンダ、2019年
ペスト菌(Yersinia pestis)によって起きる急性人獣共通感染症のペストは、ウガンダ北西部の西ナイル地域と北東に隣接するコンゴ民主共和国(DRC)の風土病である。この病気は、腺ペストや肺ペストを含む複数の臨床形態で発症し、肺ペストは稀ではあるが、急速に進行して致命的であり、呼吸飛沫を介して人から人へ伝染する。2019年3月4日、肺ペストの疑いのある患者が報告された。最初の患者(患者A)は、ウガンダ国境から約5kmのDRCに住む35歳のウガンダ人女性で、2月27日、ウガンダの家族が患者Aの4歳の子供の葬儀のためにDRCに旅行し、患者Aが重病であったこことから、家族は患者Aを西ナイルのゾンボ地区にあるウガンダの村に運んだ。患者Aは胸痛を訴え、喀血エピソードを呈し、2月28日に近くの診療所に入院したが、数時間後に死亡し、臨床検体は収集されなかった。一方、3月1日に、ウガンダの地方政府事務所はDRCの民間医療クリニックから、患者Aが来た国境近くの村でペストが伝播する可能性があるという警告を受け取った。その結果、西ナイルを拠点とするUganda Virus Research Institute(UVRI)のペストプログラムのチームは、地元の保健当局と一緒に、患者Aの埋葬に合わせて、地域の診療所と村の住民との間でペスト教育とリスクコミュニケーションを開始した。ウガンダで患者Aの世話をした23歳の患者Aの姉妹(患者B)が3月3日に発熱し、翌日、医療施設でのマラリア検査が陽性で肺炎の症状がなかったことから、アーテスネートを静脈内投与された。また、この地域でのペストの疑いの観点から、患者Bは入院してゲンタマイシンによる経験的治療を開始された。約8時間後、患者Bは血が混じった痰を喀出したため、他の患者は部屋から退出させられ、飛沫予防策がとられた。患者Bの検体からペスト菌のDNAが検出され、感染が確認された。患者Bはゲンタマイシンで7日間、ドキシサイクリンで4日間治療され、3月14日に退院した。3月5日に、UVRIと地区の代表者は接触者の追跡と予防管理を迅速に実行し、合計で患者AまたはBの接触者として129人が特定され(8人は診療所スタッフ)、127人はドキシサイクリン、コトリモキサゾール、シプロフロキサシンの5日間の予防コースを受けた。10日間の観察期間中、ペスト様症状を発症した接触者は特定されず、ウガンダでのペスト活動の兆候は検出されなかった。このイベントは、DRCで進行中のエボラウイルス病の伝染による国境を越えた疾患の広がりに対する認識が高まっている状況で発生した。ペストの流行地域の専門知識を構築することにより、流行の拡散を緩和し、死亡率を最小限に抑えるために必要な迅速な検出と効果的な対応を提供できる。さらに、国境を越えた協定は、効果的に対応する能力を改善することができる。
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