ホームIMICライブラリMMWR抄訳2020年(Vol.69)ヒト狂犬病 ― ユタ州、2018年
2020/02/07Vol. 69 / No. 5
MMWR69(5):121-124
Human Rabies — Utah, 2018
2018年11月3日に、ユタ州保健局(UDOH)は、ヒト狂犬病の疑いの1例(55歳男性)について報告を受け、1944年以降では、ユタ州住民における初めての狂犬病による死亡例となった。患者は、2018年10月17日および18日に仕事上での怪我が原因と思われる首と腕の痛みのためにアイダホ州でカイロプラクティック治療を受けた。患者は持続する頸部の痛み、項部の筋痙縮、右腕の灼熱感、右掌のしびれが持続し、19日に病院Aの救急外来を受診したが、発熱、悪寒、その他の感染症状はなかった。20日に患者は息切れ、頻呼吸、ふらふら感が生じるとともに、4日間にわたる不眠を訴え、病院Bに救急搬送された。右上肢の疼痛は持続し、重度の食道痙攣のため経口での液体摂取ができず、症状悪化と急性せん妄のため、患者は病院Cに移送された。21日に患者は気道確保のために挿管され、40.4℃の発熱があり、症状は悪化し、25日に昏睡状態に至った。26日に始まった難治性発作のため、患者は28日に病院Dに移送され、11月3日に病院Dで助言を求められた感染症専門医により、患者の嚥下時の痙攣の症状から狂犬病の可能性もあると指摘された。患者の野生動物への接触について具体的に質問したところ、家族から、発症の数週間前に患者の自宅に住み着いたコウモリと接触があったことを知らされた。医師はUDOHに報告し、皮膚、唾液、脳脊髄液(CSF)、血清などの臨床検体を採取するよう勧告された。狂犬病の曝露後予防薬(PEP)は、病気が進行していたために適応されなかった。患者は衰弱し続け、対症療法は中止され、発症から19日後の11月4日に死亡した。11月7日に生前標本(血清、CSF、皮膚、唾液)が検査のためにCDCに送付され、CSF中に狂犬病免疫グロブリンMおよびGが検出され、死後の脳幹組織および小脳検体に狂犬病ウイルス抗原およびRNAが確認された。狂犬病が確定診断されてすぐに、UDOHはIncident Command Systemを構築し、対応活動を開発および調整した。ヒト狂犬病症例の識別が遅れた結果、ユタ州の医療従事者やその他の計279人に感染の可能性があった。オンライン調査を通じて感染について評価し、狂犬病ウイルスに感染している可能性がある医療従事者74人と、患者の体液と接触した家族および地域住民の30人がPEPを受けた。この調査結果は、迅速かつ推奨されるリスク評価とPEPの準備を確実にするために、狂犬病の早期識別、コウモリの狂犬病に対する社会認識の向上、狂犬病の集団感染後の革新的なツールの使用の重要性を強調している。
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