ホームIMICライブラリMMWR抄訳2020年(Vol.69)無水アンモニア化学物質の放出 ― イリノイ州レイク・・・
2020/01/31Vol. 69 / No. 4
MMWR69(4):109-113
Anhydrous Ammonia Chemical Release — Lake County, Illinois, April 2019
2019年4月25日午前4時24分、イリノイ州レイク郡にある二車線の主要郡道にて、農業用トラクターが故障し、2つのアンモニアのタンクから少なくとも500ガロン(1,893L)の無水アンモニアが放出された。放出したアンモニアは、大きく低い白いガス状の噴煙となって、辺り一帯に停滞し、近くの住宅まで漂った。この噴煙に遭遇した車は失速し(エンジンや電子機器への影響による可能性)、運転手と同乗者はガスにより酸臭、酸味、喉への刺激、咳、呼吸困難、息詰まりがあったと述べた。全体で消防隊員129名、警察官30名、数多くの通信司令官や9-1-1通信士が対応に当たり、放出現場付近の車や住宅から被害者を救助した。また、放出現場から半径1マイル以内の住民に対し屋内退避命令(外出を控え、すべてのドアと窓を閉め、暖房、換気および空調システムを止める)が出された。消防隊員はアンモニアタンクが空になるまで散水し噴煙を希釈した(午前7時23分)。その後、地元の消防署、国家運輸安全委員会および環境保護局による調査が行われ、国家運輸安全委員会が調査の予備報告書を発表した。また、2019年5月9日、Agency for Toxic Substances and Disease Registry(ATSDR)とCDCのチームがイリノイ州に入り、レイク郡保健局とイリノイ州公衆衛生局による化学物質曝露評価調査を支援した。以下に各調査の結果を示す。環境調査では、アンモニア放出により明らかに損傷を受けた針葉樹81本を特定し、無水アンモニア噴煙のあった場所として地図化し、化学物質放出の位置と規模を描写した結果、アンモニア噴煙は少なくとも0.053 mi2(0.137km2)に広がり、放出地点に近い場所では地上15フィート(4.5m)まで達していた。医療記録の調査では、CDC/ATSDRによる調査の時点で、事故後24時間以内の無水アンモニア曝露による主訴とEDが評価した83例の医療記録を考察した。患者は、44例が女性(53%)、年齢中央値34際(1~79歳)、救急医療サービス(EMS)によりEDに搬送された35例のうち、15例(42%)は自宅にて曝露した一般市民、7例(19%)は車内にいて被爆した一般市民、13例(39%)は初期対応者であった。14例(初期対応者1例含む)が入院、うち8例はICUに入室し、7例は挿管による人工呼吸器を要した。ICUの入室期間は1~7日、死亡例は認めていない。初期応答者の調査では、噴煙の中に入ったと疑われた初期応答者38名のうち、18名(47%)は噴煙の中に入り、5名(13%)が噴煙の近くにおり、11名(29%)は噴煙には入らず、4名の曝露状況は不明であった。噴煙の中に入った18名中9名が物質放出から24時間以内に咳、肺灼熱感、息切れ、眼刺激などの症状を来した。初期応答者の13名がEMSにより病院に搬送され、うち1名がICUに入院し、挿管、人工呼吸器、ICU治療を要した。世帯調査では、物質放出地点に近い23世帯の住民48名[年齢中央値53歳(1~84歳)、19歳以上43名(90%)、男性16名(33%)、女性32名(67%)、ヒスパニック系17名(35%)]を調査した。33名(69%)は屋内退避令が解除されるまで外出を控え、11名(23%)はEMSまたは自家用車で自宅から避難、4名(8%)が屋内退避令の解除前に出勤またはその他の理由で自宅から出ていた。住民の21名(44%)が物質放出から24時間以内に咳、鼻や喉の灼熱感、息切れ、眼刺激などの症状を認め、15名(31%)が治療を受けた。そのうち8名が自宅から避難した人であり、2名が挿管、人工呼吸器、ICUでの治療を要した。5)病院調査では、EMSから事故の患者を受け入れた6つの病院のED管理者から調査した。1病院あたり1~33名を受け入れ、3病院が国内災害対応措置を実施し、5病院は化学物質曝露の種類、患者数およびその状態に関する現場の情報が不十分であったと回答した。化学物質の放出に対する効果的な対応には、事故の有害物質の迅速かつ正確な特定、現場と病院の対応者を含む実際の対応者間の明確な意思疎通が重要である。
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