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MMWR抄訳

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2018/09/28Vol. 67 / No. 38

MMWR67(38):1064-1067
Multidrug-Resistant Aspergillus fumigatus Carrying Mutations Linked to Environmental Fungicide Exposure — Three States, 2010–2017

環境殺菌剤への曝露に関連した突然変異を保因する多剤耐性Aspergillus fumigatus ― 3州、2010年~2017年

Aspergillus fumigatusは環境中に存在するカビの1種であり、浸潤性アスペルギルス症を引き起こし、幹細胞や臓器移植のレシピエントなどのハイリスク患者では致死率が50%を超える。治療はトリアゾールが有効であるが、近年、トリアゾール耐性アスペルギルス症が増加しており、とくにTR34/L98HまたはTR46/Y121F/T289A遺伝子耐性マーカーを保因する菌が問題となっている。アメリカでは2015年までこれらの遺伝子型は報告されていなかったが、この年、U.S. fungal reference laboratoryが2001年~2014年の臨床検体(220検体)からTR34/L98H、TR46/Y121F/T289A型のA. fumigatusを各2検体ずつ検出したと報告し、2017年にはトリアゾール殺菌剤で処理された商業用のピーナッツ畑の環境試料から初めてTR34/L98H型のA. fumigatusが検出された。CDCは2011年、ClinMicroNetの電子メールのリストサーブにある約800名の臨床微生物研究室長に対し、A. fumigatusの臨床分離菌を依頼し、2016年に初めてTR34/L98H型の分離株が報告され、現在までにさらに4例が報告されている。この5例と既報のTR34/L98H型のA. fumigatusが検出された2例の計7例をここに報告する。症例1は20代女性。2010年、ペンシルベニア州。鎌状赤血球貧血症に対する幹細胞移植後に、移植片対宿主病および呼吸不全を来し、耐性型A. fumigatusが喀痰から検出された。ボリコナゾールとカスポファンギンを投与したにもかかわらず呼吸状態は悪化し、アムホテリシンBとカスポファンギンの治療に変更した。6カ月後、多臓器不全のため死亡した。症例2は40代男性。2014年、ペンシルベニア州。肺移植を受けた後、A. fumigatusのコロニー形成に対し、ボリコナゾールを長期投与後にイトラコナゾールが投与された。細菌性およびウイルス性肺炎で入院し、浸潤性肺アスペルギルス症を発症したためイトラコナゾールとカスポファンギンで治療後、ポサコナゾール、カスポファンギン、アムホテリシンBが使用された。気管支肺胞洗浄液より耐性型A. fumigatusが検出された。身体所見が悪化し、A. fumigatus検査も陽性反応が続いたためリポソーマルアムホテリシンBとかすポファンギンの治療に変更したが無効であった。約2カ月後に多臓器不全のため死亡した。症例3は60代女性。2016年、ペンシルベニア州。サルコイドーシスおよび浸潤性肺アスペルギルス症に対し低用量ボリコナゾールで治療されていたが、耐性型A. fumigatusが検出され、その後、症状が増悪、治療をカスポファンギンに変更して12ヵ月後も症状は安定していた。症例4は80代女性。2017年、ペンシルベニア州。慢性閉塞性肺疾患、間質性肺線維症、過敏性肺炎などがあり、外傷による細菌性肺炎のため入院しており、耐性型A. fumigatusが気管支肺胞洗浄液から検出された。抗真菌治療は行われず、胸水をともなう気胸のため死亡したが、A. fumigatusとの関連はないと考えられた。症例5は70代男性(非居住者)。2016年、バージニア州。グアテマラから来た男性が到着から3週間後、急性気管支炎のため入院した。入院中に耐性A. fumigatusが喀痰から検出されたが、抗真菌薬は投与されず退院した。症例6は20代女性。2016年、バージニア州。外来でA. umigatusが検出された。2日後に嚢胞性線維症の治療のため入院し、ステロイドと抗生物質が投与され、抗真菌薬は投与されなかったが退院した。症例7は80代女性。2017年、カリフォルニア州。慢性閉塞性肺疾患の既往があり、痰を伴う咳を来し受診した。喀痰の培養検査でA. fumigatusを検出し,抗アスペルギルス抗体IgGは正常値の2倍であったが、抗菌薬、抗真菌薬の治療を行わず退院した。症例1~3にてトリアゾールの投与が確認されており、医療関係者はトリアゾール耐性A. fumigatus感染症に注意すべきである。

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