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MMWR抄訳

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2018/07/06Vol. 67 / No. 26

MMWR67(26):738-741
Chagas Disease Surveillance Activities — Seven States, 2017

シャーガス病のサーベイランス活動 ― 7州、2017年

シャーガス病はラテンアメリカからの移民によりアメリカに入った寄生原虫Trypanosoma cruziによる致命的な疾患であり、メキシコ、中南米では800万人がシャーガス病の潜在生存例であると推定されている。シャーガス病は感染したベクター昆虫(サシガメ)との接触、先天的感染または感染ドナーからの臓器移植や輸血を介して広がる。急性期はほぼ無症候であるか、インフルエンザ様症状が1~2週間の潜伏期間の後2カ月ほど持続する。乳児は心筋症や髄膜脳炎など重度の症状を発現するリスクが高い。未治療の場合、感染症は慢性化し、多くの症例は無症候のまま経過するが、20~30%の症例は心臓または消化器合併症を来し、死亡する場合もある。シャーガス病のサーベイランスは2017年12月現在、アリゾナ州、アーカンソー州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、テネシー州およびテキサス州の6州にて行われており、マサチューセッツ州は2014年にサーベイランスを中止した。サーベイランスは血液ドナーのスクリーニングにより感染源を特定する目的で行われている。6州ではシャーガス病は報告義務があり、うち5州ではドナーセンター、医師および研究者による可能性例の届け出も行われている。すべての州にて報告例の調査が行われ、どこで感染した可能性が高いか決定される。調査の目的はアリゾナ州、ルイジアナ州、ミシシッピ州およびテキサス州では局所的な土着感染の同定、アーカンソー州およびテネシー州ではすべての伝播様式に関するデータの収集であり、4州では土着曝露が疑われる場合は患者の住居にて定期的な環境評価を実施する。州は医師にシャーガス病の臨床管理に関する教育および指導を提供、アーカンソー州では保健局がシャーガス病に関するアラートを医師、とくに産科/婦人科の医師に通知するが、先天性感染症に関するサーベイランスを行う州はない。また、体系的公衆衛生サーベイランスにヒト以外のデータが含まれる州はなく、テキサス州では2013年のサーベイランス開始以降、イヌの感染症データを3年間収集していたが、ヒトの感染リスクに有用な情報ではないとして中止している。多くの州では提出された昆虫を分析し、ヒトとの接触状況によりT. cruzi検査のためCDCに送付している。3州(アリゾナ州、テキサス州、マサチューセッツ州)は開始以来、シャーガス病のサーベイランスシステムを変更しており、アリゾナ州では2016年、CDCの診断研究室からの確認試験の結果に関して血液ドナーを分類するために新しい症例基準を採用し、テキサス州では無症候性慢性感染症からの進行例に関するデータを収集するため症例基準を改定した。マサチューセッツ州では2008年にシャーガス病を報告義務疾患に加え、州の医療従事者に対しシャーガス病への意識を高めようとしたが、リスクのあるドナーが同定されることは稀であり、公衆衛生的対応の必要性は限られていたため、2014年、報告義務疾患リストから除外した。

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