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MMWR抄訳

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2018/04/27Vol. 67 / No. 16

MMWR67(16):465-469
Fatal Falls Overboard in Commercial Fishing — United States, 2000–2016

商業漁業における致死的な船外への転落 ― アメリカ、2000年~2016年

商業漁業はアメリカでもっとも危険な仕事の1つであり、2016年の労働関連死亡率は労働者10万人あたり86.0と全労働者の死亡率に比べ23倍高値となっている。CDCのNational Institute for Occupational Safety and Healthは沈没に続き致死率の高い船外への転落に関するデータの分析を行った。2000~2016年、204名の商業漁業労働者が船外に転落して死亡し、年間死亡者数は2003年が20名で最も高く、2016年が5名で最も低く、平均して年3.9%減少した。発生場所は東海岸(62名、30.4%)、メキシコ湾(60名、29.4%)、アラスカ(51名、25.0%)、西海岸(26名、12.8%)の順で多く、ハワイ沖でも5名が死亡した。また、漁種別ではメキシコ湾のエビ漁(34、16.7%)、東海岸のロブスター漁(18、8.8%)、アラスカのサーモン流し網漁(16、7.8%)、東海岸のホタテ貝漁(10、4.9%)による転落死亡者が多かった。死亡した204名の内訳は、男性が202名、女性が2名、年齢は24歳以下が17名、25~44歳が84名、45~64歳が79名、65歳以上が7名、不明が17名、年齢中央値は43(16~77)歳であった。死亡者の多くは甲板員として雇用されており(120、58.8%)、うち94名(46.1%)の漁業経験年数は中央値16(0~65)年で、9名は正式な海上安全訓練を受けていた。転落前の仕事内容に関しては152名(74.5%)にて明らかであり、約半数(77名、50.7%)は漁具を使用していた。また、転落原因は149名(73.0%)にて明らかであり、バランスを失う(48名、32.2%)、つまずく/滑る(47名、31.5%)、ギアに巻き込まれる(31名、20.8%)などが多く、要因として単独作業(99名、48.5%)、アルコール/薬物の使用(37名、18.1%)、悪天候(24名、11.8%)などの関与が指摘されている。121名(59.3%)の転落は目撃されておらず、うち108名(89.3%)は遺体が見つかっていない。目撃された83名の転落では、56回の救助活動が行われ、22名が救出されたが蘇生されなかった。犠牲者は全員、死亡時に救命胴衣を着用しておらず、19名(9.3%)に救命浮輪が使用されたが、14名(73.7%)は救出に失敗、海難救助用アラームの使用は1件のみであった。1時間以内に救出された30名の乗組員のうち21名に心肺蘇生が行われたが、いずれも蘇生しなかった。転落の状況、救助の試み、救命救助用具の使用状況など、いずれも死亡を予防することが可能であったことを示唆しており、転落による死亡者数を減少するにはこれらへの取り組みが必要である。

References

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