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MMWR抄訳
2018/03/09Vol. 67 / No. 9
MMWR67(9):274-278
Update: Dura Mater Graft–Associated Creutzfeldt-Jakob Disease — Japan, 1975–2017
最新情報:硬膜移植に関連したクロイツフェルト・ヤコブ病 ― 日本、1975年~2017年
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)は致死性神経変性疾患で、最もよく受け入れられている仮説によれば、宿主にコードされた感染性の異常なプリオンタンパク質(プリオン)が複製されて発症する。ほとんどのCJD症例は自然発生的(散発性CJD)または遺伝性(遺伝性CJD)である。医原性CJDは、医療/外科手術において、プリオンで汚染された器具または製品に曝露した後に起こり、死体硬膜移植片に関連したCJD(dCJD)は、医原性CJDの最も多い病型である。今回、1975年~2017年に日本において同定されたdCJDの154例について、疫学的特徴をまとめる。これらの症例は、世界中で報告されたdCJD症例の60%超を占め、日本での異常に高いdCJD罹患率は、1997年に初めて報告された。 2008年には、脳神経外科手術においてパッチとして頻繁に使用されるグラフトの製品[Lyodura(B. Braun Melsungen AG、Melsungen、ドイツ)]が、感染媒体の可能性として同定された。一方、Lyoduraの国際的リコールは起こらず、製品の保存期間が比較的長かったため、このグラフトは生命に危険がない状況の日本人患者に頻繁に使用された。日本では、1983年~1987年に毎年2万人がLyoduraグラフトの移植を受けたと推定されており、アメリカ人レシピエント推定数のおよそ50倍以上であった。この期間、dCJDを発症した123例の日本人患者は外科的処置を受けていたが、114例(93%)がLyoduraグラフト移植を受けており(他の9例の移植片ブランドは不明)、日本でのLyoduraグラフト移植を受けてから30年以内にdCJDを発症するリスクは、少なくとも877例に1例(すなわち、10万人のLyoduraグラフト移植患者あたりdCJD 114 例)であった。この分析では、硬膜グラフトの移植から発症までの平均期間(潜伏期)は中央値および平均とも13年(1~30年)であった。 2008年に更新されて以来、新たに報告された22例のdCJD症例のうち11例は潜伏期間が24年を超え、このうちの3例の潜伏期間は30年であり、報告されている中で最も長かった。dCJDのアウトブレイクは、ドナーの厳格なスクリーニング、適切な記録管理、グラフトの混合の回避、そして理想的には硬膜グラフトが製造されるたびに有効な滅菌手順を使用することの重要性を強調している。 ヒトのプリオン病の長い潜伏期(数十年)には、新たな感染源の発見への課題をもたらす可能性があり、プリオン病のアウトブレイクを認識し、可能な限り早期に予防措置を実施する必要がある。
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