ホームIMICライブラリMMWR抄訳2017年(Vol.66)ポリオ根絶へ向けた進展 ― パキスタン、2016年・・・
2017/11/24Vol. 66 / No. 46
MMWR66(46):1276-1280
Progress Toward Poliomyelitis Eradication — Pakistan, January 2016–September 2017
1988年に、世界保健総会はGlobal Polio Eradication Initiativeを開始した。3つの野生型ポリオウイルス(WPV)の血清型のうち、2012年以降はWPV1型(WPV1)のみが検出されている。2014年以降にWPV1伝播が続いている国は、パキスタン、アフガニスタン、ナイジェリアのみである。 今回、2016年1月から2017年7月までのパキスタンにおけるポリオウイルス根絶へ向けて行われた活動と進捗状況を報告する。UNICEFおよびWHOの推定に基づくと、定期予防接種プログラムを通じて提供された3回の経口ポリオウイルスワクチン(OPV)の乳児の全国ワクチン接種率は、2016年では72%で、 2014年および2015年の推定値から変わらなかった。定期予防接種または追加接種活動(SIA)によるOPV投与を受けたことがない全国の生後6~23カ月の小児での非ポリオ性急性弛緩性麻痺(AFP)症例の割合は、2015年の2.1%から2016年では0.3%、2017年では0.01%へ減少し、4回以上のOPV投与を受けた割合は2016年の96%から2017年の97%へ僅かに増加した。2016年1月から2017年9月までに、2価のOPV(ワクチンウイルス1型と3型)を使用した22回のSIAが実施された。2016年1月からは、さらに集団免疫性を高め、WPV伝播遮断の見通しを強化するために、10回のSIAで注射剤の不活化ポリオウイルスワクチンが使用され、シンドー州、連邦管轄トライバル・エリア(FATA)、バロチスタン州、カイバル・パクトゥンクワ州の9百万人を超える小児に供給された。ポリオウイルスのためのパンジャブ州、イスラマバード、シンドー州、カイバル・パクトゥンクワ州、バロチスタン州の指定位置での下水の定期的検査では、2017年1月から9月までに採集された環境サンプル数は2016年の同時期よりも34%増加した。2017年の1~9月に、WPVは468検体の72件(15%)で検出され、2016年の同時期では348検体の36件(9%)で検出された。2016年のバロチスタン州において、4件の環境調査検体で、伝播型ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)2型が陽性となった。2017年では、現在までcVDPVは検出されていない。パキスタンでは、WPV1症例が2016年では20例報告されたが、2017年9月25日現在では5例で2016年の同時期(16例)から69%減少した。2017年のWPV1症例はすべて生後36カ月未満の小児であった。WPV1症例数の減少に付随して、2015年に検出された数種の遺伝系統の伝播は、調査報告期間では遮断されたと考えられた。一方、AFP調査により、2016年から2017年の伝播率の低い季節に、少なくても2つの主な遺伝クラスターから分離されたWPV1は検出されており、シンドー州およびクウェッタ地区の主要な伝染源では、伝播が続いていることが示唆されている。パキスタンでポリオウイルスの感染を阻止するには、1)予防接種キャンペーンの質の向上、2)ポリオサーベイランス(特に環境検体でポリオウイルス陽性の地域)の強化、3)アフガニスタンと共通の感染源への集中が必要である。
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