ホームIMICライブラリMMWR抄訳2017年(Vol.66)紛争下での大規模ポリオアウトブレイクへの対応 ― ・・・
MMWR抄訳
2017/03/03Vol. 66 / No. 8
MMWR66(8):227-231
Response to a Large Polio Outbreak in a Setting of Conflict — Middle East, 2013–2015
紛争下での大規模ポリオアウトブレイクへの対応 ― 中東、2013年~2015年
ポリオ根絶へ向けた世界的な進歩として、ポリオフリー地域における野生型ポリオウイルス(WPV)のアウトブレイクは、世界的な根絶のためのタイムラインにとって重大なリスクとなる。活発な紛争、慢性的な政情不安、広域的な住民の立ち退きが起こっている国および地域では、ヘルスケアおよび予防接種サービスの破綻のため、特にアウトブレイクに対して脆弱である。2013年に中東で発生したポリオアウトブレイクは、シリアから始まった。シリア内戦の勃発後2年にアウトブレイクは発生し、38例からシリアでは過去10年間で初めてのWPVが検出された。8カ国(エジプト、イラン、イラク、ヨルダン、レバノン、パレスチナ、シリア、トルコ)の中央政府はアウトブレイクを公衆衛生緊急事態に指定し、急性弛緩性麻痺(AFP)の監視の質の改善および定期外の追加予防接種活動(SIA)中の2700万人を超える小児へのポリオワクチン接種に焦点を絞った多面的なアウトブレイク対応計画の構築に、Global Polio Eradication Initiative(GPEI)と強調して取り組んだ。中東のポリオアウトブレイクはWHOのEarly Warning, Alert and Response Network(EWARN)を含む感染国のAFP監視のためのシステムにより検出され、2013年10月に同定された。非ポリオAFP(NPAFP)および便検体の検査率は、感染国のポリオ症例の検出力の調査の指標となる。便検体の適切性(麻痺症発生から24時間以内に少なくても24時間以上の間隔で2回の便検体を採取し、適切に検査室へ送付)は、シリアでは2013年の68%から2015年では90%へ増加し、イラクでは2012~2015年の各年で≧80%を維持した。レバノンでも2015年に84%に改善した。8カ国は対応計画において国々を2つのエリア:1)ポリオウイルス感染国(シリア、イラク)と2)地理的な近接性およびアウトブレイクゾーン(残り6カ国)からの非難民の流入に基づいたポリオウイルス輸入の重大なリスクのある国にグループ化した。これらの地域での戦略的反応は、フェーズ1(2013年10月~2014年4月)ではWPV感染の遮断、フェーズ2(2014年5月~2015年1月)では難民、移動する人口、安全確保が困難な地域、低ワクチン接種率、地理的に到達が難しい地域を含むポリオウイルス輸入および流行の高リスク地域を同定し、SIAの優先的な実施と監視の強化、フェーズ3(2015年2月~10月)では定期予防接種およびSIAの強化による免疫性の向上を実施した。対応計画の実行により、アウトブレイクの同定から6カ月以内に封じ込めおよび伝播の遮断に成功した。今回のアウトブレイク対応において導入された協調的アプローチは、紛争およぎ政情不安におけるポリオアウトブレイクへの対応のモデルとして役立つと思われる。
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