ホームIMICライブラリMMWR抄訳2015年(Vol.64)コンドミニアムリゾートでの臭化メチル曝露による重症・・・
MMWR抄訳
2015/07/24Vol. 64 / No. 28
MMWR64(28):763-766
Severe Illness from Methyl Bromide Exposure at a Condominium Resort — U.S. Virgin Islands, March 2015
コンドミニアムリゾートでの臭化メチル曝露による重症疾患 ― アメリカ領ヴァージン諸島、2015年3月
2015年3月22日に、Agency for Toxic Substances and Disease RegistryはアメリカEnvironmental Protection Agency (EPA)より、アメリカ領ヴァージン諸島にあるコンドミニアムリゾートで休暇を過ごしていた家族で急性臭化メチルの急性毒性を疑われる4症例の報告を受けた。臭化メチルは、アメリカでは家庭内およびその他の居住環境での使用は禁止されている殺虫剤である。アメリカ領ヴァージン諸島の保健部門(VIDOH)、Department of Planning and Natural Resources(DPNR)、EPAにより実施された調査では、家族が滞在したユニットと同じ建物内の下の階の空き室で3月18日(家族が病院に搬送される2日前)に燻蒸剤として臭化メチルが使用されていたことを確認した。家族は10代2名と成人2名の4名(14~49歳)で、24時間以内に進行した全身性脱力、重症のミオクローヌス、線維束性攣縮、知覚異常、喚語困難などの神経学的症状により3月20日に病院に搬送され、このうち3例は嘔吐および下痢があり、気管内挿管および人工呼吸器が必要であった。4例全例にベンゾジアゼピン、フェノバルビタール、プロポフォールが投与され、10代の2例は重症のためロクロニウム、成人の2例には有機リン中毒の可能性があるためプラリドキシムが使用された。当初、有機リン中毒やシガテラ中毒が疑われたが、同じ食品を摂取した他の人たちに発症がなかった。このため、可能性のある病因として化学毒性を考慮し、コンドミニアムリゾートの管理者と連絡した結果、臭化メチルの使用が判明した。臭化メチルの中毒が疑わしいことから、全例に2回の血液透析を施行した。3月20日の血清中の臭化物濃度は10mg/dL未満~13.6mg/dLであった。3日以内に全例がアメリカ本土に移送され、6月30日時点では4例とも救急病院を退院、3例は神経機能障害のため身体リハビリテーションを入院して受けていた。EPAが実施したサンプリングでは、臭化メチルの大気中濃度は3月24日の上階の居住ユニットで1.12ppm、3月27日の下階の居住ユニットで0.59ppmであった。3月25日に、DPNRより燻蒸を実施した害虫防除会社へ臭化メチルの使用中止命令が発令された。さらに、DPNRとEPAの調査により、2014年10月20日に同じコンドミニアム集合住宅の他の4つの居住ユニットで同じ害虫防除会社により臭化メチルが使用されたことが判明したが、大気中濃度の測定値は利用できなかった。2014年10月および2015年の燻蒸により、発症した4例のほかに37例が臭化メチルに曝露した可能性があった。連絡先が判明した20例中16例にアンケート調査をした結果、6例で臭化メチル曝露に一致した症状(頭痛、倦怠感)を認め、このうち4例は救急隊の要員であった。害虫防除会社は臭化メチルの使用が家庭内および居住環境での使用が禁止されていることを承知しておく必要があり、また、医師は臭化メチルへの曝露が毒性学的症状の原因となりうることを認識すべきである。
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