National Hansen’s Disease Programの症例記録データからアメリカにおけるハンセン病(HD)の発症率について報告する。1994～2011年におけるHD新規診断例は2,323例、平均年間発症率は人口100万人あたり0.45であり、1994～1996年の0.52から2009～2011年には0.43と17％低下していた。アメリカ国内生まれと国外生まれにおける1994～2011年の新規診断例の平均年間発症率はそれぞれ0.13、2.81であり、国内生まれでは1994～1996年：0.16、2009～2011年:0.16と変化はなく、国外生まれは1994～1996年：3.66から2009～2011年:2.29と大きく低下していた。アメリカの国勢調査に出生国のデータが含まれるようになった2007年から2011年の5年間における新規診断例は677例、うち461例(68％)に出生国データがあり、オセアニア生まれでの発症率が556.93と他の地域に比べ10倍以上高く(ヨーロッパ：0.21、北アメリカ：5.74、アジア：10.61、アフリカ：14.47、南アメリカ：33.34)、うち97％がミクロネシア連邦またはマーシャル諸島生まれであり、ほぼ半数(48.9％)がハワイ州で診断されていた。HD発症から診断までの年数は、分析対象2,124例の74％が3年未満であったが、発症から何年も後に診断された症例もあった。発症から診断までの年数は中央値：1年、平均：2.4年であり、国外生まれの症例中232例(18％)はアメリカ移住前に発症、診断まで中央値：2.5年、平均：5.7年かかっており、国内生まれおよび移住した年または移住後に発症した症例では診断までの中央値はともに1年と有意差を認めた。HDは発症率の低い稀な疾患であり、医師も不慣れなため診断が遅れるが、治療せずに放置した場合、神経損傷、組織崩壊および機能消失を来す重度の消耗性疾患であり、その症候および症状とともにアメリカでも発症する疾患であることを認識することが必要である。