ホームIMICライブラリMMWR抄訳2014年(Vol.63)中央アメリカで感染しアメリカの拘留施設で発症した狂・・・
2014/05/23Vol. 63 / No. 20
MMWR63(20):446-449
Rabies Death Attributed to Exposure in Central America with Symptom Onset in a U.S. Detention Facility — Texas, 2013
狂犬病による死者数は全世界で毎年約55,000人に上り、世界人口の約半数が現在、狂犬病の流行地域に居住している。アメリカで2003~2013年の間に報告されたヒトの狂犬病症例は34例で、10例(29%)が外国での感染であった。2013年5月9日、28歳のグアテマラ国籍の男性がアメリカ国境警備隊に身柄を拘束された。7日後、拘留施設において不眠、不安感、悪心、嚥下障害、流涎、喀出が発現し、次第に激越、頻脈を来したため、5月18日に病院に救急搬送された。胸部CT検査にて縦隔気腫と診断され、手術のため第二次病院に転送された。縦隔気腫は外科的処置をせずとも改善したが、39.8℃の発熱、精神状態および呼吸状態が悪化し、気管挿管した。血圧不安定、流涎、恐風症を認めた。ELISA法にて血清中に狂犬病ウイルスを検出したため、試験的治療法であるミルウォーキー・プロトコルを実施したが奏効せず、患者は11日に脳死宣告された。検体はCDCにて確定診断を行い、皮膚、唾液および死亡後の脳検体から核酸増幅によりイヌ狂犬病ウイルス中央アメリカ株が分離された。男性は以前に犬を飼っていたが2011年に死亡している。剖検では咬傷は認められず、感染動物および感染時期は不明であった。動物実験により感染動物の狂犬病ウイルス排出期間は症状発現の10日前からとされる。CDCおよびテキサス州Department of State Health Servicesは患者の発症14日前からの行動を追跡し、推定ウイルス排出期間中第8~16日の間に拘留されていた4施設にて同時期の拘留者549名のうち68名にリスク評価が必要とし、拘留中の1名、送還者のうちグアテマラ人13名、その他ラテンアメリカ国籍1名の計15名と執行官および拘留施設スタッフ320名中3名に曝露後予防接種(PEP)を勧告した。また、患者の治療中に接触のあった2医療機関スタッフ44名中5名がPEPを受けた。患者の唾液、涙、神経組織との接触によりヒト間でのウイルス伝播の可能性がある。狂犬病流行地域から入国した進行性の脳疾患患者では狂犬病を疑い、法執行機関および公衆衛生関係者は接触者の迅速な同定と曝露後感染予防の実施が必要である。
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