ホームIMICライブラリMMWR抄訳2013年(Vol.62)中国人移民2例における自家製醗酵豆腐に関連したボツ・・・
2013/07/05Vol. 62 / No. 26
MMWR62(26):529-532
Botulism Associated with Home-Fermented Tofu in Two Chinese Immigrants — New York City, March–April 2012
2012年3月に、ニューヨーク市のDepartment of Health and Mental Hygiene(DOHMH)は、食品媒介性ボツリヌス中毒の疑いで同じ病院に入院した中国人移民2例の報告を受けた。症例1は39歳男性で、嘔吐に続く嚥下障害、複視、構音障害、呼吸困難、歩行困難が4日間に及んだため、3月3日に受診した。神経学的検査で両側性の脳神経障害を示し、運動力は正常であったが深部腱反射は低下しており、ICUに入院し、切迫した呼吸不全に対する懸念のため挿管した。重症筋無力症を調べる塩化エドロホニウムテストで陽性を示し、静注免疫グロブリン療法を開始した。筋電図検査を実施したが、ボツリヌス中毒の診断には至らなかった。9日に片側上肢の脱力を認めたが、アセチルコリン受容体抗体は陰性であった。その後、容態は改善し、26日にリハビリテーション施設に転院した。血清および便検体検査の結果、27日に便検体からマウスバイオアッセイによりB型ボツリヌス毒素が確認された。症例2は、症例1と同じクイーンズ区住民の36歳女性で、嘔吐および下痢に続き、構音障害、嚥下障害、めまいのため、3月28日に同病院に入院した。検査により両側性の脳神経麻痺、軽度の右上肢脱力、上肢の深部腱反射の喪失を認めた。女性は集中治療室で気管挿管を受け、症例1と同じ医師が担当した。直ちにボツリヌス中毒を疑い検査したが、血清および便検体からボツリヌス毒素は検出されなかった。女性は回復し、4月18日に退院した。2例とも症状の発現する1週間以内に自家製の発酵豆腐を食べており、症例1の妻も同量を食べていたが無症状であった。それぞれの家庭では、2012年1月にクイーンズ区の同じ中国食料品店で生の豆腐を購入後、同様のレシピ、すなわち、室温で7日~10日発酵後に唐辛子や塩等を加え、冷蔵庫で保存した。摂食前に加熱はしなかった。3月29日にDOHMHがそれぞれの家庭の発酵豆腐の検体および食料品店から得た生の豆腐について検査した結果、症例1の家庭の発酵豆腐からB型ボツリヌス毒素が検出されたが、症例2の発酵豆腐、各家庭で添加した食材、食料品店の生の豆腐から毒素は検出されなかった。DOHMHは医療関係者に通知し、英語および中国語のプレスリリースを発行したが、新たな症例は認めなかった。 食料品店では、豆腐を冷蔵せずに覆いのない水をはった容器に入れて販売していたため、DOHMHは商店経営者に適切な豆腐の保存の必要性を指導した。また、患者が購入した時点で食料品店に豆腐を納入した業者は倒産していた。公衆衛生の専門家や臨床医は、発酵豆腐とボツリヌス菌中毒との関連について認識する必要がある。
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