ホームIMICライブラリMMWR抄訳2013年(Vol.62)薬学を基にしたインフルエンザサーベイランスの有用性・・・
2013/05/24Vol. 62 / No. 20
MMWR62(20): 401-404
Value of Pharmacy-Based Influenza Surveillance - Ontario, Canada, 2009
カナダ公衆衛生局(PHAC)では、疾患サーベイランスを増強するため、現行対策の一環として、抗ウイルス薬の処方量変化に関するデータのサーベイランスに対する有用性をレトロスペクティブに調査した。従来のサーベイランスは、医師および公共の保健機関からの検査結果および臨床観察データの収集および蓄積に依存しているが、発症からデータの収集、蓄積、分析までは数日から数週間を要する。一方、レトロスペクティブな疾患発生の研究では、従来の公衆衛生調査手法を使用した疾患頻度の増加の認識よりも前に、薬剤販売額が増加することを証明している。今回の分析では、2009年に世界的に流行したインフルエンザの第二波期間に、カナダのオンタリオにおいて調剤されたオセルタミビルまたはザナミビルのすべての処方薬に占める割合と、地域の保健当局レベルにおいて検査で確認されたインフルエンザA(H1N1)の報告数を毎週比較した。処方薬データはRx Canadaより提供され、オンタリオ地域の約75%の薬局からの個人レベルの処方データ(薬剤名、処方日、患者の年齢および性別)が含まれた。インフルエンザA(H1N1)の検査報告は、Ontario Ministry of Health and Long-Term Careより提供された。抗ウイルス薬の処方と検査で確認されたインフルエンザA(H1N1)の症例との関係は、ポアソン回帰モデルにより分析した。2009年7月1日から12月31日の間に、約43,000のオセルタミビルまたはザナミビルの処方の情報が得られ、患者年齢は平均34歳および中央値33歳、女性の割合は57%であった。インフルエンザA(H1N1)感染は7,300例で認め、患者年齢は平均24歳および中央値18歳、女性は47%であった。発症日、検体の検査室への提出日、検査結果報告日は、それぞれ56%、32%、12%で明らかであった。平均時間差は、発症日から検体提出日までが6日、検体提出日から報告日までが6日であった。インフルエンザA(H1N1)発症と抗ウィスルス薬処方との各トレンドライン間には殆ど差がなく、毎週のインフルエンザA(H1N1)の症例数と抗ウイルス薬処方間には統計的に有意な関係があることが示された。以上より、抗ウイルス薬処方の割合は、インフルエンザの臨床検査報告より前に増加し、調剤データは、ほぼリアルタイムに利用可能であった。薬局処方データはタイムリーな情報を提供し、地域のインフルエンザ動向を明らかにすると考えられる。
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