ホームIMICライブラリMMWR抄訳2010年(Vol.59)あるレセプション後の複数の血清型のSalmonel・・・
2010/09/03Vol. 59 / No. 34
MMWR59(34):1093-1097
Multiple-Serotype SalmonellaGastroenteritis Outbreak After a Reception - Connecticut, 2009
Salmonellaは食品媒介疾患の原因として一般的であるが、複数の血清型によるSalmonella感染症アウトブレイクの報告は少ない。2009年9月18日、Connecticut Department of Public Health(DPH)はSalmonella胃腸炎患者の報告を受けた。患者は9月6日に開催されたあるレセプションに出席しており、予備情報でレセプションの開催後に他の参加者でも胃腸炎症状が発現していることが明らかになった。この報告は、DPHと地域の公衆衛生局が実施したSalmonella胃腸炎アウトブレイクに関する症例対照研究・環境調査・臨床検査の結果をまとめたものである。レセプションでの食事は会場から離れたレストランで準備され、レストランのスタッフが宴会会場に届け、セルフサービスのビュッフェとして提供された。レセプション参加者約150名のうち25名に電話インタビューを行い、同定されたSalmonella胃腸炎9名(レセプション後5日以内に下痢が発現)と対照14名(胃腸疾患の発現なし)を対象に症例対照研究を行った。症例群9名(25~51歳、男性5名)における食事から発症までの潜伏期間中央値は13.5時間(9.5~95.5時間)、罹病期間中央値は8.5日(0.5~14日)であった。症例群は対照群に比べてポテトサラダの摂取率が有意に高かった(それぞれ88%、8%)。食事を準備したレストランの環境調査でSalmonellaは検出されず、ポテトサラダは残っていなかった。レストラン従業員4名へのインタビューでは、4名とも胃腸疾患を発症していなかったが、レセプションの食事を直接準備した2名は調理済みの食品を素手で扱っており適切な手洗いを行っていなかったことが明らかになった。患者7名、レストラン従業員4名より便検体を採取して検査を行った結果、患者5名と従業員1名の検体より2種類の血清型のSalmonella(Salmonella enterica血清型Schwarzengrund、Salmonella enterica血清型Typhimurium変異体O:5-)が検出され、患者1名と従業員1名は両血清型が陽性であった。各血清型の分離株は、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)パターンが区別できなかった。アウトブレイクの原因はポテトサラダと思われたが、汚染機序は不明である。感染制御対策として、Salmonella陽性のレストラン従業員を2回連続して採取した便検体で細菌増殖がみられなくなるまで休職とした。複数の血清型のSalmonellaによるアウトブレイクは認識されているよりも頻繁に起こる可能性がある。Salmonellaによるアウトブレイク発生時には便検体の採取と公衆衛生検査室での包括的な血清型タイピングおよびPFGEの実施により、また複数のSalmonella血清型が疑われる場合には複数の単一コロニーのピックを検査することによってアウトブレイクの疫学的特徴をより良好に調査することが可能である。アウトブレイクに関連する全てのSalmonella血清型の知識は、アウトブレイクの原因解明やその範囲の確定、適切な制御対策の決定に有用と考える。
Copyright © 2013 International Medical Information Center. All Rights Reserved.