ホームIMICライブラリMMWR抄訳2008年(Vol.57)麻疹根絶への進歩-日本、1999~2008年
2008/09/26Vol. 57 / No. 38
MMWR57(38):1049-1052
Progress Toward Measles Elimination - Japan, 1999-2008
2005 年、WHOの西太平洋領域(WPR)の地域会議において、WPRに所属する国全てにおいて2012年までに麻疹を根絶すると決定され、日本では1)12ヶ月齢以降の適切な時期に1回目の予防接種(MCV1)を受けることを促進するため、2001年より国民の意識を高めるキャンペーンを展開する、2)5~6 歳での2回目の予防接種(MCV2)を2006年より採用するなどの措置が取られていた。しかし、2007~2008年にかけて、大きなアウトブレイクが発生、すでに根絶に達した国々へも拡大する事態となった。麻疹の診断基準は全身発疹と発熱(38.5℃以上)、咳、鼻感冒または結膜炎、または研究室レベルでの確診(麻疹特異性IgM抗体の検出)とされている。1999~2003年、麻疹のアウトブレイクは小児、成人(18歳以上)ともに毎年発生しており、2001年のアウトブレイクが最も大きく、15歳未満の症例数は265,000例と推定されている。この年の24~35ヶ月齢の小児におけるMCV1 接種率は83.2%であったが、このアウトブレイク後接種率は増加し、2002年は96.4%、2007年には97.9%に達した。2007年、東京都と埼玉県で発生した麻疹の流行は、5月の大型連休後には日本中に拡大、症例数は約18,000例と推定され、この流行は2008年まで持続、6月22日までに9,631例(臨床的確診例:6,169例、研究室確診例:3,462例)が報告された。発生は国内47都道府県に広がっており、とくに東京都 (4,229例、43.9%)、北海道(1,344例、13.9%)にて多く、15歳以上の症例が5,794例(60.2%)を占め、とくに15~19歳が2,584例(26.8%)が多く認められた。予防接種の状況が明らかな6,919例では、2,540例(36.7%)が接種を受けたと報告した (MCV1:2,436、95.9%、MCV2:104、4.1%)。遺伝子型の分析では104検体中96検体(92.3%)がD5型、5検体 (4.8%)がH1型、3検体(2.9%)がA型であった。また、麻疹性脳炎を来した症例は9例(13~42歳)、死亡例は認めていない。このアウトブレイクを受けて、2007年12月、1)2008年4月より13歳および18歳を対象に麻疹、風疹(MR)ワクチンを接種、2)全国規模の麻疹-風疹サーベイランスシステムを確立する、3)モニタリングのためにNational Measles Elimination Councilおよび地域的な委員会を設置する、を柱とする5年計画が始動、さらに就学前児童の接種状況の把握、学校の健康診断での接種状況の確認が進められている。
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