ホームIMICライブラリMMWR抄訳2008年(Vol.57)最新情報:麻疹-アメリカ、2008年1月~7月
MMWR抄訳
2008/08/22Vol. 57 / No. 33
MMWR57(33):893-896
Update: Measles - United States, January-July 2008
最新情報:麻疹-アメリカ、2008年1月~7月
米国では2000年の麻疹根絶宣言以降、麻疹の輸入が散発的に起こっている。2000~2007年の麻疹の年間報告数は平均63例であったが、2008年は1月1日~7月31日の間に131例がCDCに報告された。この報告では2008年の米国内の麻疹に関する情報を更新し、最近ワシントン州とイリノイ州で発生したワクチン未接種の就学児における2件のアウトブレイクの概要を紹介する。2008年の最初の7ヶ月間に15州およびワシントンDCから報告された131例の患者のうち89%は他国(特に数件のアウトブレイクが進行中のヨーロッパの国々)からの輸入あるいは輸入関連による麻疹であった。123例は米国在住者であり、そのうち99例(80%)は20歳未満、112例(91%)はワクチン未接種あるいは接種状態不明であった。15例(11%)は入院したが、死亡例はなかった。2008年4月28日Washington State Department of Healthはグラント郡において、麻疹が疑われるある家族の報告を受けた。発端者は4月12日に皮疹が発現し、4月18日~21日にはその家族の他の子供7例に発熱と皮疹が発現した。3例は肺炎を発症し、麻疹特異的IgM抗体が陽性であった。グラント郡では他に11例が4月13日~5月30日に皮疹を発症した。これら19例は疫学的に関連しており、このうち16例は就学児で親の哲学的あるいは宗教的理由により麻疹含有ワクチンの接種を受けていなかった。ウイルス検査を行った8例の検体全てから、日本とヨーロッパの一部で循環している遺伝子型D5株が検出された。このアウトブレイクの発生源として、3月25日~29日にワシントン州キング郡で開催され発端者を含む患者4例が参加していたある教会の年次総会が関与している可能性が考えられた。2008年5月19日、Illinois Department of Public HealthはDuPage County Health Departmentより麻疹が疑われる症例の報告を受けた。5月27日までに麻疹と確定された4例は10~14歳のワクチン未接種女児であり、5月17日~19日に皮疹が発現した。全例が5月5日とその2日前に行われたイベントに参加しており、そのイベントには最近イタリアから戻り発熱と皮疹の発現歴を有するティーンエイジャーが参加していた。4例中1例より分離されたウイルス株はイタリアで循環している遺伝子型D4株であった。7月31日までにさらに26例の麻疹患者が報告され、全例がこれら4例と疫学的関連があった。全30例中29例は生後8ヶ月~17歳(残り1例は43歳)であり、そのうち就学年齢の25例(83%)全例が親の予防接種に対する考えから麻疹含有ワクチンの接種を受けていなかった。麻疹のアウトブレイクはワクチン未接種者数が多いコミュニティで発生する可能性があり、麻疹拡大を抑制するためには米国における高い麻疹・ムンプス・風疹(MMR)ワクチン接種率を維持することが必要である。
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