ホームIMICライブラリMMWR抄訳2008年(Vol.57)固形臓器移植により伝播したリンパ球性脈絡髄膜炎ウイ・・・
2008/07/25Vol. 57 / No. 29
MMWR57(29):799-801
Lymphocytic Choriomeningitis Virus Transmitted Through Solid Organ Transplantation - Massachusetts, 2008
リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)は、世界中でみられるげっ歯類媒介アレナウイルスである。ヒトはげっ歯類の排泄物への暴露により感染する可能性があり、ヒトからヒトへの伝播は母体-胎児感染や固形臓器移植でのみ起こる。LCMV感染では無症候性の場合もあるが、髄膜炎や脳炎などが発現する場合もある。死亡率は1%未満であるが、臓器移植レシピエントのような免疫抑制患者は致死性出血熱様疾患を発症する可能性がある。2008年4月15日、臓器調達組織(OPO)はCDCに重篤な疾患を発症した腎移植レシピエント2例を報告した。この報告は、移植ドナーおよびレシピエントの臨床経過や検査結果とその後の公衆衛生調査結果をまとめたものである。臓器ドナーはアルコール中毒の既往歴のある49歳の男性で、2008年3月初旬にけいれん発作発現後入院した。各種検査結果より単純ヘルペス脳炎と細菌性髄膜炎を疑い経験治療を行ったが、3月9日に心停止となった。標準的血清学的ドナースクリーニング検査などを行い、OPOの臓器提供基準を満たしたため、3月中旬に両側腎臓をそれぞれネフローゼ症候群による末期腎疾患の70歳女性、高血圧症による末期腎疾患の57歳男性に移植した。前例は移植3週後に嗜眠と食欲不振のため再入院し、その後肝不全や多臓器不全が発現し、移植4週後に死亡した。後例は移植2週後に発熱と重篤な肝炎を伴った多臓器不全発症のため再入院した。LCMV感染症確定(4月22日)後、免疫抑制療法を中止し免疫グロブリンの静注とリバビリン投与を開始したが、凝固障害とLCMVウイルス血症、多発性細菌血症が発現し移植10週後に死亡した。血液検査にてドナー・レシピエントとも急性LCMV感染症のエビデンスが明らかになったことから、ドナーがLCMV感染源と考えた。公衆衛生調査としては、ドナーのげっ歯類暴露に関する評価や診療記録のレビューの他、一般市民や医療関係者へのLCMVに関する教育的情報の普及も行った。無菌性髄膜炎や脳炎を有するドナーは、レシピエントを死亡させる可能性のある感染症の伝播リスクを有することが考えられる。そのようなドナー由来臓器に関しては、移植レシピエントにおけるリスクと有益性を慎重に考慮する必要がある。また医療従事者は無菌性髄膜炎や脳炎の患者および不明熱、肝炎、多臓器不全を有する臓器移植レシピエントの診察時にLCMV感染症を考慮するべきである。
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