ホームIMICライブラリMMWR抄訳2008年(Vol.57)ヒト狂犬病-ミネソタ、2007年
2008/05/02Vol. 57 / No. 17
MMWR57(17):460-462
Human Rabies - Minnesota, 2007
2007年10月20日、ミネソタ州に住む46歳男性が狂犬病のため症状発現から約1ヵ月後に死亡した。本症例は2007年に米国で報告された唯一のヒト狂犬病症例である。この報告では、Minnesota Department of Public HealthとCDCによる医学的・疫学的調査結果とその後の公衆衛生活動の概要を紹介する。本症例は2007年9月19日に右手の感覚異常のため受診した。その後感覚異常は四肢に拡大し、弛緩性の脱力感、運動失調へと進行した。9月28日に行ったMRIでは脳に異常所見はみられなかったが、頚髄に炎症を示唆する異常所見を認めた。9月29日に発熱(38.4℃)のため入院し、その後複視、振戦が発現し、迅速に呼吸不全が進行した。脳脊髄液(CSF)および血清学的検査にて各種感染症の徴候はみられなかった。臨床および検査プロファイルより特発性横断性脊髄炎と推定診断しメチルプレドニゾロンの静注などを行ったが、神経状態はさらに悪化した。特発性横断性脊髄炎ではあまりみられない上行性麻痺と昏睡の発現や脳MRIで異常所見を認めたことなどより、狂犬病性脳炎を疑った。10月16日に患者の家族へのインタビューを行い、患者は8月19日に素手でコウモリに触れていたことが明らかになった。10月17日、患者のCSFおよび血清検体にて狂犬病ウイルス抗体が検出され、狂犬病と確定診断した。患者は10月20日に死亡した。狂犬病の診断後、Minnesota Department of Healthは患者との接触者における狂犬病曝露後予防(PEP)の必要性を判断し、患者と接触した家族14名中3名と患者のケアを行った医療従事者524名中51名にPEPを行った。患者がコウモリに曝露した小屋の調査ではコウモリが住み着いている証拠はみられなかったが、曝露(8月19日)から症状発現(9月19日)までの約1ヶ月間の潜伏期間から、狂犬病ウイルスの感染源はコウモリによる咬傷の可能性が高いと結論づけた。迅速に進行する急性脳炎の鑑別診断には狂犬病も含めるべきである。また動物の咬傷に関連したリスクと適切な狂犬病のPEPに関する一般人の認識を改善する必要がある。
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