ホームIMICライブラリMMWR抄訳2008年(Vol.57)移植により伝播した結核-オクラホマ、テキサス、20・・・
2008/04/04Vol. 57 / No. 13
MMWR57(13):333-336
Transplantation-Transmitted Tuberculosis - Oklahoma and Texas, 2007
臓器移植ドナーからの感染症伝播はレシピエントにとって重大な問題である。結核(TB)は臓器移植に関連した感染性合併症として知られており、欧米では約0.35~6.5%のレシピエントで発生する。2007年、オクラホマ州保健衛生局は臓器移植ドナー死亡後に生前採取した検体の培養にてMycobacterium tuberculosisを確認した。この報告は、その後の調査結果をまとめたものである。この臓器移植ドナーは2007年4月にアルコール離脱性痙攣と嚥下性肺炎のためオクラホマ州の病院に入院した46歳男性で、2007年6月に脳死の判定を受け、肝臓と腎臓がオクラホマ州とテキサス州の医療施設で3例に移植された。ドナーの死亡から3週間後、生前採取した脳脊髄液の培養にてM.tuberculosisが検出された。ドナーは死亡する6ヶ月前に嚥下性肺炎の疑いで治療を受けており、2007年3月にも市中肺炎で入院していた。TBの病歴や海外への渡航歴はなく、また、TB患者との接触は確認されておらず、死亡6ヶ月前に行ったツベルクリン皮膚反応は陰性であった。レシピエント3例のうち腎移植を受けた50歳女性は移植6週後に汎血球減少と敗血症様症候群が発現し、ドナーのM.tuberculosis培養陽性の通知を受けたため抗TB治療を開始したが、移植9週後に死亡した。剖検後に明らかになった死因は播種性TB、白血球減少、末期腎不全であった。また腎移植を受けた23歳女性は移植7週後に発熱と頭痛が発現し、同時にドナーのM.tuberculosis培養陽性の通知を受けたため抗TB治療を開始した。移植から約10週後に腎同種移植片機能障害が発現したが、抗TB薬の調整と少量ステロイドの投与により腎機能は安定した。これら2例では血液検体などよりM.tuberculosisが検出され、その分離株のPCR法による遺伝子型とRFLPパターンはドナー由来株と一致し、臓器移植によってTBが伝播したことが示唆された。肝移植を受けた59歳男性は移植2ヵ月後に抗TB治療を開始したが、TB症状はみられず、その後培養でもM.tuberculosisは検出されなかった。臓器移植に関連したTB伝播リスクを低下させるために、臓器移植関係者は可能性のある全ドナーについて評価時にTBの危険因子を考慮し、医師はTB感染移植レシピエントでみられる異常な兆候や症状を認識する必要がある。また感染が疑われた場合に実施されるドナー伝播TBの可能性の調査では医師、移植施設、臓器調達組織(OPO)および公衆衛生機関の間での迅速なコミュニケーションが必要である。
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