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MMWR抄訳

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2008/03/07Vol. 57 / No. 9

MMWR57(9):232-235
U.S.-Incurred Costs of Wild Poliovirus Infections in a Camp with U.S.-Bound Refugees - Kenya, 2006

アメリカ行き希望難民のキャンプ内での野生型ポリオウイルス感染症に対するアメリカの負担コスト-ケニア、2006年

アメリカ行き希望難民は出発前に規定どおりの予防接種を受ける必要はないが、この政策はアメリカのコミュニティにおいてワクチンにより予防可能な疾患の輸入リスクを持続させる可能性がある。2006年10月‐12月、アメリカへの移動待機中の難民が居住するキャンプにおいて野生ポリオウイルス1型(WPV1)によるポリオのアウトブレイクが発生した。この報告は、アメリカの連邦および州の行政機関、アメリカ資金提供機関、任意機関がこのアウトブレイク中に行った国内および国際的活動の概要とその費用について述べる。2006年10月16日、CDCはソマリアに近いケニア北東部Dadaab地域にある3ヶ所の難民キャンプの1つに居住する3歳の麻痺性ポリオ小児においてWPV1感染が検査で確定されたという報告を受けた。そのキャンプはほとんどソマリ難民で占められており、最近ソマリアから約3万人の難民を受け入れていた。さらに2例目として12月19日に同じキャンプにすむ12歳の小児でWPV1感染が確認された。2例ともそのキャンプで生まれ、WHOのExpanded Program on immunization勧告に準じて3価経口ポリオウイルスワクチン(tOPV)の接種を受けていた。Kenya Ministry of HealthとUnited Nations High Commissioner for Refugees、United Nations Children’s Fund(UNICEF)、WHOおよびいくつかの非政府組織はそのキャンプの5歳未満の小児に対しtOPVに比べWPV1に対する1回投与あたりの免疫原性が高い1価経口ポリオウイルスワクチン1型(mOPV1)の接種キャンペーンを3回行った。CDCが最初の症例報告を受けた10月16日には、ケニアのキャンプから難民944人がアメリカに到着あるいはアメリカへの移動中であった。このうち733人は9月1日‐10月15日にアメリカに到着し(グループ1)、48人は大西洋を飛行中であり(グループ2)、163人はInternational Organization for Migration(IOM)が管理し、アメリカ行き希望難民の移動中のケアと診療を行っているケニアのNairobi Transit Centerに滞在していた(グループ3)。CDCはこれら944人の難民を追跡調査し、難民を受け入れた34州の保健衛生局に通告してポリオワクチンの接種と追跡調査を勧告した。IOMはグループ3に対し、出発前(10月17日)にポリオの徴候・症状のチェックとtOPVの1回接種(mOPVが入手できなかったため)を行った。全3グループの難民にはアメリカ到着後4週間に不活性化ポリオウイルスワクチン(IPV)の接種を1回以上行い、州および地域の保健衛生局はポリオの徴候・症状のサーベイランスを続けた。グループ2は10月16日にアメリカ到着後、ワクチン接種とサーベイランスに加え検便を行った。一部の州は他の日に到着した難民についても検便を行った。これら到着難民944人に加え、Dadaabの3ヶ所のキャンプには約1,200人の難民が数ヶ月中にアメリカに移動する予定となっていた(グループ4)が、これら難民については最低1週間隔で2回のmOPV接種を受けるまで移動を中止した。ポリオ対応関連費のデータを得るため、CDCはIOMや州および地域の保健衛生局などポリオ対応を行った関係機関に対し、情報提供を呼びかけた。難民1人当たりの平均費用は、難民を受け入れた34州中20州(59%)より報告された難民944人中603人(64%)のデータに基づき算出した。また、32州(94%)より報告された難民833人(88%)の追跡調査による健康データも分析した。アメリカにおいてポリオ発症例は確認されず、CDCおよび州の保健衛生局が検査した372の便検体からWPVは検出されなかった。このポリオ対応活動のためにアメリカが負担した総費用309,283ドルであり、各個人に対する費用が全体の74%を、輸送費がほぼ10%を占めた。アメリカ行き希望難民に対する出発前のポリオワクチン接種は、ポリオの輸入リスクを低下し、難民間でのポリオのアウトブレイクへの対応にかかる費用を減少させる可能性がある。

References

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