ホームIMICライブラリMMWR抄訳2007年(Vol.56)デング出血熱-アメリカ-メキシコ国境、2005年
2007/08/10Vol. 56 / No. 31
MMWR56(31):785-789
Dengue Hemorrhagic Fever - U.S.-Mexico Border, 2005
デング熱は蚊が媒介する疾患であり、4種類のフラビウイルス属血清型株(DEN-1、DEN-2、DEN-3、DEN-4)のいずれかと関連する。一度感染した血清型に対しては生涯免疫が形成されるが、他の血清型に感染した場合はデング出血熱(DHF)を発症する危険性が高い。DHFは出血、血小板減少、血管透過性増加により致死的ショックを来す重症疾患である。テキサス州南部、メキシコとの国境付近ではデング熱の散発的、局所的発生が報告されているが、DHFに関しての発生報告はない。今回、2005年7月、テキサス州ブラウンズビルにおいて、DHFの発生が報告され、8月には隣接するメキシコ、タマウリパス州にてDHF 223例(17.8%)を含むデング熱1,251例の発生が報告され、これらに関し、Texas Department of State Health Services(TDSHS)、Mexico health authoritiesおよびCDCによる臨床的、疫学的調査が行われた。ブラウンズビルの症例は、この町に16年間在住する女性であり、発症後、治療のため国境を越え、タマウリパス州マタモロスの病院に約2ヶ月通院し、抗生物質の処方を受けた。6月28日、デング熱および尿路感染症と診断され、3日間入院、血小板減少症(血小板数:62,000/mm3)を来したが出血症状は認められず、輸液と抗生物質で退院に至った。7月1日、アメリカに戻り、治療継続のためブラウンズビルの病院に入院したが、血小板数は39,000/mm3まで減少、アルブミンは2.9g/100mL、便潜血検査陽性、超音波検査では胸水が認められた。7月4日の退院時には血小板数は118,000/mm3に増加、発疹熱またはウイルス感染症の可能性から担当医はドキシサイクリンを投与した。この症例の症状はWHOのDHF診断基準と一致していたが、ブラウンズビルの病院ではDHFとは診断されず、Texas Border Infectious Disease Surveillance(BIDS)によりデング免疫グロブリンM(IgM)陽性およびデング熱免疫グロブリンG(IgG)抗体価の上昇(1:655,350)が確認され、二次性デング感染症と診断された。メキシコでは8月27日、Tamaulipas State Health ServicesからTDSHSにデング熱の発生が報告された。メキシコの症例基準を満たす症例は1,251例、WHOのDHF基準は223例(17.8%)が満たしていた。10月、テキサス州とタマウリパス州による調査が行われ、ブラウンズビルが首都であるテキサス州カメロン郡にて新たに24例のデング熱症例が確認された。さらに12月にはデング熱により入院した129例の記録を再調査が行われた。25例はカメロン郡、104例はマタモロス郡の入院例であり、59%が女性、年齢はカメロン郡で30-76歳(中央値:47.5歳)、マタモロス郡で7-70歳(同:36.0歳)であった。症状は発熱に加え、筋肉痛(82%)、頭痛(78%)、腹痛(41%)、発疹(23%)などがあり、19%の症例が慢性疾患を有していた。死亡例は認めなかった。カメロン郡では25例中16例(64.0%)、マタモロス郡では104例中34例(32.7%)がWHOのDHF基準を満たし、この50例のうち、11例がWHO grade3またはデングショック症候群に分類され、39例はgrade2であった。マタモロス郡では111世帯から131例分の血液検体を得、うち30検体が抗デングIgM陽性、101検体がIgG陽性、ブラウンズビルでは118世帯141例分の血液検体のうち、IgM陽性4検体、IgG陽性47検体であった。タマウリパス州では1995年に全ての血清型株の蔓延が報告され、DHF症例は2000年2.2%から2006年には23.4%に増加しており、最近、テキサス州でのDHF発症が報告されるようになった。今後国境付近でのデング熱に関する調査を強化するとともに、医療関係者はDHFに関する認識を高めるとともに、治療法を習得すべきと考える。
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