ホームIMICライブラリMMWR抄訳2006年(Vol.55)ヒトペスト-4州、2006年
2006/09/01Vol. 55 / No. 34
MMWR55(34): 940-943
Human Plague - Four States, 2006
ペストはバクテリアYersinia pestisによる人畜共通感染症である。2006年には、ヒトペスト合計13症例が、ニューメキシコ(7症例)、コロラド(3症例)、カリフォルニア(2症例)、テキサス(1症例)の4州の住民間に報告され、この症例数は1994年以来、米国で一年間に報告された中で最も多い。症状は2月16日から8月14日の間に発症し、2例(15%)は死亡した。患者の年齢中央値は43歳(範囲:13歳~79歳)で、8名(62%)の患者は女性であった。5名(38%)は原発性の敗血症性ペストで、残る8名(62%)は腺ペストであった。2名(15%)の患者は2次的に起こるペスト肺炎を発現し、医療機関で抗生物質予防薬を投与されることとなった。この報告は、13症例中の6症例を要約し、ペストの重篤性と広範な臨床所見に焦点を当て、ペストが疑われた際の即座の診断と治療の必要性を強調している。症例1では、2月17日にテキサス州トラヴィス郡に住む39歳の男性が、高熱、幻覚症状、嘔気、嘔吐で入院した。血液培養でY. pestisが検出された。患者はゲンタマイシン、ドキシサイクリン、シプロフロキサシン、レボフロキサシンを含む複数の抗生物質で治療後、回復した。疾病前、患者はニューメキシコ州リー郡でウサギの皮を剥いでおり、1匹のウサギの培養はY. pestisを検出したが、臨床分離株と区別がつかなかった。症例2では、4月17日にカリフォルニア州ロサンゼルス郡で28歳の女性が1984年以来最初となるペストの診断を受けた。女性は発熱、敗血症ショック、痛みを伴う腋窩の腫れで入院し、血液培養でY. pestisが検出され、患者はゲンタマイシン、レボフロキサシンによる治療を受けた。後に、医療機関は患者がカリフォルニア州カーン郡で蓄殺されたウサギの生肉を扱ったことを知った。カーン郡の環境調査により、地域で収集されたウサギの食用肉がY. pestisを発症させたことが明らかとなった。患者とウサギの分離株のPFGEパターンは、区別がつかなかった。医療接触者と患者の自宅を訪問した家族と友人合計16名は、抗生物質予防薬を受けた。症例3では、5月17日にニューメキシコ州バーナリロ郡に住む54歳の女性が、熱、重篤な腹痛、血便の既往歴で地方緊急医療センターを訪れた。患者にはリンパ節腫脹は認められなかったが、血を嘔吐し急性呼吸窮迫があった。地域病院に移送されたが、到着数時間前に死亡した。症例4では、5月25日にニューメキシコ州サンタフェ郡に住む45歳の男性が、吐き気、嘔吐、熱で病院救急部を訪れ、肺炎で入院しゲンタマイシンで治療を受けた。呼吸困難により挿管、血液培養でY. pestisを検出した。人工呼吸器により徐々に回復したが、患者がドキシサイクリンで曝露後の予防を受ける前に少なくとも37の医療従事者が患者と接触していた。患者の犬2匹は過去にY. pestis感染であったことが血清学的に証明された。患者の所有地のモリネズミのノミからY. pestisが分離された。症例5では、7月9日にコロラド州ラプラタ郡に住む30歳の男性が、熱、吐き気、嘔吐、鼠径リンパ節腫脹で病院救急診療部を訪れたが、治療せずに家に帰された。3日後、敗血症、両側性肺浸潤があり、ペストと認識され隔離された。ゲンタマイシンで治療回復したが、5人の病院勤務者はドキシサイクリンで予防治療を受けた。患者の犬の1匹はY. pestis感染の血清学的証拠があり、患者の家の近くで収集された2種のノミよりY. pestisが検出された。2005年7月前にラプラタ郡から4人のヒトペスト症例報告があった。症例6では、7月18日にニューメキシコ州トーランス郡に住む43歳の女性が、嘔吐、下痢、腹痛、熱で診療所を訪れた。患者は最近犬に噛まれ蜂巣炎を疑って治療されたが、次の日鼠径リンパ節腫脹がありペストを疑った。ICUへ入りゲンタマイシン、ドキシサイクリンを投与された。Y. pestisが血液培養により分離された。治療にも関わらず、7月22日死亡。患者所有地からの動物(マウス4匹、イワリス5匹)を捕えたが、実験室でのY. pestisの証拠はなかった。
Copyright © 2013 International Medical Information Center. All Rights Reserved.