ホームIMICライブラリMMWR抄訳2006年(Vol.55)ダニ麻痺症例-コロラド州、2006年
2006/09/01Vol. 55 / No. 34
MMWR55(34): 933-935
Cluster of Tick Paralysis Cases - Colorado, 2006
ダニ麻痺症は、しばしば他の神経障害あるいは疾患(ギランバレー症候群あるいはボツリヌス中毒症)と混同される急性の上行性弛緩性麻痺を特徴とする稀な疾病である。ダニ麻痺症は、ダニの唾液中毒素によって発症すると考えられ、麻痺は通常ダニの除去後24時間以内に消滅する。2006年5月26日から31日に、コロラド公共衛生環境局は、コロラド中央部北にある山中20マイル圏内に住む、あるいは訪問したダニ麻痺症の最近4症例について報告を受けた。この報告は、これらの症例を要約すると共に、ダニ汚染地域の医療提供者と住民にダニ麻痺症への認識を高める必要性を強調している。症例1のウエルド郡に住む6歳の少女は、5月15日に両下肢脱力症状で目覚めた。翌日立ち座りができず、嚥下困難となり、地域の小児病院に搬送された。5月16日、ギランバレー症候群の推定診断で集中治療室に入院し、挿管した。5月17日夜、患者の入浴中に髪の生え際にダニを発見した。ダニは即時除去され、患者の症状は改善し、1週間後に退院した。ダニは雌のDermacentor andersoniと確認、少女はラリマー郡山中に住む祖母をたびたび訪問し、症状発症7日前にも祖母を訪問していた。症例2のラリマー郡山中に住む86歳男性は、5月22日に立ち座りや移動が徐々に困難になり、慢性多発性神経障害と脊髄狭窄による衰弱の結果、地域の病院に入院した。理学的検査で脳神経機能は正常であったが、全身性衰弱で深部腱反射は欠如していた。5月23日夜、患者の背中にダニを認め、除去後4日間で症状は改善した。5月27日に退院したが、2週間後にも患者は回復したと感じず、戸外に出るイヌが感染源ではないかと考えたが、イヌにダニ麻痺症兆候は見られなかった。症例3のグランド郡山中に住む78歳女性は、5月22日全身性衰弱と歩行困難で、顔面筋力低下、会話不明瞭、味覚低下、錯乱へと進展した。5月25日、ルームメイトが彼女の髪の生え際下の首後部にダニを発見した。救急診療の検査者が首後部上皮を切りダニを除去した。患者は退院し24時間以内に衰弱、味覚変調、錯乱状態も解消したが、退院3週間後まだ疲れ易かった。彼女の報告によればハイキング、散歩などは毎日していた。症例4の慢性腎不全既往歴を持つラリマー郡に住む58歳男性は、4月20日に南テキサスを旅行した。4月24日、彼は手が疼き口周りに痺れを感じ、その後起立できなかった。妻が彼の背中にダニを発見したが救急診療部に移送される前にダニを除去した。ICUに入院したが挿管はせず、数時間後手足が回復、介助で歩行可能になった。5月5日に退院したが、6週間後まだ衰弱が残る自覚症状があった。患者は、しばしば庭仕事をし、種々のアウトドア活動をしていた。
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