ホームIMICライブラリMMWR抄訳2006年(Vol.55)乾燥された獣皮からの炭疽菌の吸入-ペンシルバニア州・・・
2006/03/17Vol. 55 / No. 10
MMWR55(10): 280-282
Inhalation Anthrax Associated with Dried Animal Hides - Pennsylvania and New York City, 2006
2006年2月21日、Pennsylvania Department of Health(PDOH)はCDCとニューヨーク市(NYC)Department of Health and Mental Hygiene(DOHMH)に、ニューヨーク市在住男性の炭疽菌の吸入例を報告した。この報告は、地域・州・連邦の公衆衛生・動物衛生・法規制の関係諸機関によって実施された疫学・環境共同調査の結果をまとめたものである。2月16日、この患者はNYCからペンシルバニア州北部への移動中、悪寒と虚脱感を訴え地域の病院を受診した。3日前から息切れ、乾性咳、倦怠感が発現しており、胸部X線所見にて両側浸潤影と胸水を認めた。血液培養はグラム陽性桿菌を認め、その分離株は2月21日にはPDOH研究所、2月22日にはCDCによってBacillus anthracisと確認された。3月14日現在、患者はまだ入院中である。吸入炭疽の診断後、曝露源の決定と他者におけるリスクの可能性を検討するため疫学・環境共同調査が速やかに開始された。患者はアフリカのヤギや牛の皮を主に扱っている輸入業者から入手した乾燥獣皮を用いて伝統的なアフリカの太鼓を作製していた。その作製過程でエアゾール化された多量の塵が発生したが、マスクなどは着用していなかった。最後に作業を行ったのは2006年2月12日であり、2月15日に作業場の清掃を行った。作業場から採取した環境検体は全てB.anthracis陽性であり、患者のアパートや車から採取した環境検体の一部もB.anthracis陽性であった。これら疫学・環境調査の結果より、感染源は作業場での汚染獣皮由来のエアゾール化B.anthracis胞子への曝露と考えられた。獣皮から塵が発生する作業過程中に作業場にいた4人に対し、炭疽菌吸入による曝露後予防実施を勧告した。3月14日現在、インタビューや更なるサーベイランスにて他の炭疽確定例や疑い例は確認されていない。獣皮や獣毛による吸入炭疽のリスクを排除するための最も安全な方法は、B.anthracis胞子を生育不能にさせるよう処理された獣皮を使用することである。獣皮製太鼓の作製者や演奏者などは、新たな皮膚病変や重度の呼吸器疾患が発現した場合には健康管理者に報告するべきである。
Copyright © 2013 International Medical Information Center. All Rights Reserved.